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[ サスペンス ]
シンデレラの罠
セバスチアン・ジャプリゾ 出版月: 1964年11月 平均: 5.78点 書評数: 18件

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東京創元社
1964年11月


1964年11月

東京創元社
2012年02月

No.18 7点 YMY 2023/03/24 23:04
「私は二十歳の娘、事件の探偵であり証人、被害者であり犯人なのです。さて一体わたしは誰でしょう」という人を喰った極限的な筋立てを持つ虚構の世界。
プロットだけを追求した退屈な手品小説と一蹴する向きもあるが、御伽噺に使われるような文体で悲痛な物語を語っていくあたり、単なる知的ゲームに終わっていない。

No.17 7点 虫暮部 2021/08/28 10:52
 前半。こんなのバレバレじゃん。
 と思っていたら後半、思いがけないところへ引っ張り込まれた。但し、こうなっちゃうと真相がどうでも意外性は無くなっちゃうんだよね。実際、最後の最後で“実はこっちでした!”と明かされても、伏線があるわけじゃなし、“ふーん”と思っただけだった。でも、時間が経ってみると、そこが本書の怖いところ。
 安部公房『他人の顔』と併読したらえらいことになる。

No.16 7点 人並由真 2021/06/03 04:05
(ネタバレなし)
 今日(もう昨日だが)は、予定分の仕事が早めにまとまったので、少し時間ができた。じゃあ何か腹応えのある作品を読もうと思って「マダコンナモノモヨンデイマセンデシタナ」系のこれを手にした。
 数十年前に新刊で買った旧訳も、しばらく前にたぶん古本で買った新訳も家にあるが、今回は後者で読む。新訳版の方が、すぐ脇にあったし。

 売りの「一人四役」については、昔どっかのミステリ雑誌でオタク系ミステリ作家(栗本薫とか都筑道夫とかああいうタイプの作家だったと思う~具体的に誰だったかは失念)の対談記事があり、そのなかで本作に言及。そこで「こういう趣向をやるんなら記憶喪失という設定を用いるのは安易だと思う(それなら、どの立場にも繋げやすいから)」という主旨の発言を読み、これがずっと印象に残っていた。
 ああ、実作を読むとその辺が改めて、よ~くわかる。おかげで前半はちっとも盛り上がらない。

 ちなみに本作は1962年の作品。
 これは絶対に(?)、重度の火傷で入れ替わった(?)ヒロインというメインモチーフの踏襲として、同じフランスの作家、アルレーの前年の作品『黄金の檻』への返歌だと思う。
 前作『寝台車の殺人者』(同じ62年作品)で推理作家として再デビューし、それ以前に若手文学作家としての実績もあるジャプリゾが、すでに1953年から活躍していたアルレーの諸作が視界に入っていないとは考えにくい。
 まあこう書いても『黄金の檻』も『シンデレラの罠』も文芸設定のみ似通うところはあっても、ミステリとしてはまったくの別ものなのでネタバレには当たらない。ご安心を。
(なお、これはまったくの私事ながら、ついこないだ『黄金の檻』を読んだばかりで、今回、本作を手にしたというのは単なる偶然だ・笑。)

 それでまあ、なにを言いたいのかというと、こちらの勝手な観測どおりに、あえてジャプリゾが(ミステリ作家としての)先輩アルレーの近作と同じモチーフの作品を、不敵にも自覚的にぶつけてきたといえるのなら、そこには正に「俺ならこうする」という本気の勝算が読み取れるハズである。
 そして個人的には、確かにそんな送り手の気迫を実感。
 後半の二転三転の展開は、自分はこのネタならこういうものをやりたいんだ、という意気込みを感じた。演出が弱くてこなれが悪かったり、時代の推移のなかで古びてしまった部分もあるが、十分に力作だとは思う。一人四役ネタなんかどうでもいいよ。
 (中略)ははたして(中略)なのか、その(中略)に絞り込まれてゆく物語の強烈なベクトル感こそがこの作品の真価で醍醐味。

 ところで新訳版の巻末の訳者・平岡氏の作品解題はとても丁寧で圧巻なれど、ラストが(中略)というのだけは、コレは担当訳者の引き倒し、でしょうね。
 別に「(中略)ストーリー」じゃなくってもいいじゃん。「(中略)ストーリー」「だから」作品がコーキューになるって訳でもないしな。なんでまあ初期HM文庫版・某カー作品の解説といい、評論家ってのは「(中略)ストーリー」だと騒ぎたてたがるのか。正直、よくワカラン。
 個人的には最後の決着は、本サイトでminiさんがレビュー(ネタバレ以降)でおっしゃった受け取り方でまったくいいと思うよ。これをさらにややこしく考えるのは、ただの牽強附会ってモンでしょう。
 
 評点は、時代が変わって新鮮度は落ちてしまってはいるんだけど、新古典時代の力作として愛せる一編ということで、この点数。

No.15 5点 レッドキング 2020/11/20 22:58
記憶喪失はそれ自体が解決を要する「Who?」だから、第一人称で叙述されれば即ミステリ始動となる。「あたしってA?B?」のミステリが、途中から第三人称叙述挟んだサスペンス展開となり、最後は、ひんやりとサイコ風に「ドグラマグラ」して終わる。

No.14 5点 クリスティ再読 2018/09/04 21:21
何となく思いついてフランス物をまとめてやってるけど、やっぱり大国ではあって、バラエティに富んでいるよ。フランスっぽいといえば、いかにもな本作「シンデレラの罠」。mini さんの評がしっかりツッコんであって、読ませますね。「一人四役」の件は「考えてみりゃそんなものか」という程度の軽い狙いだから、強調するのはあまり趣味のいい話じゃないのは同感。
前半の記憶がない頃の方が、サスペンス的には面白いと思う。ビアン風味が結構利いてるな。ひねった章題をつけて、前後で要素を重ねながら、時系列・視点人物をズラして切り替える手際がかっこいい。スタイリッシュな小技はいいんだけど、全体から見ると陳腐で底の割れやすい話だと思う。
何となく見当がついて、後半はシラケ気味に読んでいた...まあこんなもんだろう。フランス物のアンチパターン、かも。

No.13 6点 猫サーカス 2018/09/03 20:00
「わたしは探偵、犯人、被害者、証人、その四人すべてなのだ」というトリッキーな設定で50年以上前に出版されて評判を呼んだ作品。語り手の「わたし」は病院で目を覚ますと顔にも手にも包帯が巻かれ記憶も失っていた。やがて幼い頃から自分と友人のドムニカを知っているというジャンヌが迎えに来て退院するが、ジャンヌの言葉や態度に次第に違和感が膨らむ。「わたし」は本当は誰なのか?という不安が緻密に計算された巧みな筆致で描かれ、疑心暗鬼の迷宮に引きずり込まれていく。記憶が戻るにつれドムニカ、ジャンヌ、さらにはお金持ちのミドラ伯母さんの屈折した愛憎関係が浮かび上がり、謎はいよいよ深まり翻弄される。やがて、ひねりのきいたラストへ。だが、ふと本当にそれが真相なのか、もしや作者の罠ではないのかと初めから読み返したくなった怖い作品。

No.12 5点 青い車 2016/11/14 17:45
 リドル・ストーリーとして有名な作品ですが、とりわけ読みにくいと思っていたフランスの翻訳ものにも関わらず軽い文体であっという間に読むことができました。最初から最後までハラハラには事欠かず、かなりよくできたプロットだったという記憶があります。しかし、そもそもこの手の形式の面白さがわからないので、読後のすっきり感がないのはむしろマイナスポイントでした。

No.11 3点 あびびび 2016/04/07 09:10
中盤から話は落ち着いてくるが、序盤はすごく読みづらい。要するに、遺産相続の奪い合いなのだが、仕掛け人が記憶喪失になり、話が一転、二転、反転する。最初の100ページがまったく進まず、放棄も考えたが、常にベスト100に入る作品だけに我慢した。

しかし、自分の脳みそでは、この本の良さが分からなかった。

No.10 8点 蟷螂の斧 2014/11/02 17:35
(東西ベスト41位)サスペンスのお手本のような作品。裏表紙にある一人四役はいわゆる本格物ではないのであまり意味をなさないのでは?、だだの煽りか?(笑)。本作のオマージュ、あるいは挑戦として書かれた作品も多いらしい。綾辻行人・鯨統一郎(未読)山田正紀(既読)の各氏の名が挙がっているので、読んでみたいと思う。サスペンスの傑作と位置づけてよいと思います。

No.9 5点 ボナンザ 2014/04/09 15:01
サスペンスとして見るとおもしろいが、解説で言われているような驚天動地な内容ではない。

No.8 6点 mini 2012/02/28 10:02
本日28日に創元文庫から新訳版が刊行される、らしい
旧訳版が訳が古くなったからって~のが理由だったら他に候補なんていくらでも有るだろうによ、何でこれ選んだ?

「シンデレラの罠」は陳腐な手段ながらもちょっと気の利いた謎をフランス風にお洒落に仕立てた、本来ならサスペンス小説のファンにこそ読んで欲しい作だ
しかしながら初めて読む読者が先入観を持つ代表的な作品でもある
その先入観とは?、そう、もちろんトリッキーな本格を期待する誤ったイメージだ
その原因は、読者側と出版社が半々というところだろう
まずは読者側の姿勢
ジャプリゾは各種ガイドを見てもサスペンス小説の作家であり、たしか作者自身もミステリー作品として書いたのは「シンデレラ」を含む初期の2~3作だけだと言ってた記憶が有るし、実際に中期の「殺意の夏」なんか読むと狭い意味でのミステリー作品かどうかも微妙だ
この作品だって当然サスペンス小説の前提で読み出すべきなのだが、普段は本格しか読まず他ジャンルに偏見を持ってるタイプの読者がより手を出してしまいがちという悪習がある
しかし責任の半分は出版社側にも有る
創元文庫の宣伝文句、あれはいかんだろう、やたら1人4役ばかり強調してさ、トリック本格と誤解させてる
はっきりこれはサスペンス小説のジャンルであると明記すべきだ、新訳版ではどうなってるんだろ
大体さぁ、見開き扉やカバー裏の紹介文に関してはさ、創元文庫のは拙いものが多い
早川文庫やポケミスのそれは悪く言えば面白味に欠けるが適切と言えば適切だ
しかし創元のははっきり言って扇情的で恥ずかしい文面だったりネタバレすれすれだったり、とにかく不適切なものが多い
これは私は以前から感じていたことだ
例えば同じフランスのサスペンス小説、ノエル・カレフ「死刑台のエレベーター」の惹句などは、そこに書いてある事が肝心の本文内容の8割くらい占めていて、そこまで書いちゃ駄目だろと、その後で話がさらに続くのかと思ったらそれが殆ど全てじゃねえかよ
「シンデレラの罠」だって本格しか興味ありませんて読者に対しては、これはサスペンス小説だと警告した方が親切ってもんだろ
まぁそんな偏った読者側の姿勢にも問題が有るが、その手の読者層は現実にはかなり存在するからねえ

ところで!
この小説は結論を曖昧なままで終わりにした仕掛けではありません、ちゃんと伏線が有って解決編で結論が出ています
こんな簡単な解決編の意味が理解出来ない読者はあまり居ないと思うけど、たまに作者の意図が分かってない読者も居るみたいなので、一応2人の内どちらが残った方つまり”私”なのか教えてあげます

* ↓ 注意!はい、ここからネタバレです ↓ *



香水の名前が『シンデレラの罠』である事を知っていたのは、2人の内、一方のみなのです、作者はラスト近くでお洒落に正体を明かしています

No.7 5点 2011/03/01 10:10
10代のころ、翻訳アレルギーに陥れた憎き作品です。当時ずっと持ち歩いていましたが、結局読み通せませんでした。
今読んでみると、文章はいたって読みやすいし、薄っぺらだし、なぜこの程度の本に振り回されたのか、という疑問を感じます。ただ、話が時間軸を行ったり来たりしながら進むし、人称も章ごとに代わるし、読みにくくする要因が物語構成にありそうです。まあ、逆にそれが本書の面白みなのかもしれません。読者がわけが分からなくなるようにすることが、この作者のねらいなのでしょう。とにかく、「私はいったい誰?」という謎を楽しむのがいちばんです。
名作というほどではありませんが、うまい作家が脚本を書けば名作映画に仕上がるように思います。

翻訳アレルギーの素となった作品がもう1冊あり。
アリステア・マクリーンの「八点鐘が鳴る時」です。

No.6 4点 こう 2010/07/25 15:20
 恐らく「一人四役」の宣伝にひかれてこの小説を手に取った読者が多いと思いますが私もその一人でした。
 当時としては良く考えられたプロットでしょうが文章が個人的に合わなくて楽しめなかった覚えがあります。伏線もありラストで真相は(おそらく)わかりますが個人的にはどっちでもいいと思った記憶があります。
 3作品ほど読みましたがジャブリゾ作品は訳のせいもあるのかもしれませんが楽しめた覚えがありません。短くてさっと読める点はいいと思います。

No.5 6点 kanamori 2010/07/21 19:09
「東西ミステリーベスト100」海外編の67位はフランス・ミステリの異色作。
「私はこの事件の探偵です、被害者です、目撃者です、そして犯人なのです。私は一体だれでしょう・・・」という惹句で話題をさらったサスペンス。今考えてみれば、主人公を記憶喪失にして、××ネタを使えば、この一人四役のプロット創作はわりと簡単だと分かりますが、当時は結構衝撃的でした。

No.4 5点 ロビン 2008/10/10 17:47
確かに本格ではないので、論理的帰結は必要ないのかもしれないけど、とにかく理解し辛い。(とりあえずそれは翻訳のせいにして)
突如過去の話に戻ったり現実の話だったり、時系列がばらばら。視点も一人称から三人称へと行ったり来たりで混乱した。
まあ、「そういう系」のものだと割り切って読めば……。

No.3 7点 レイ・ブラッドベリへ 2008/05/27 22:00
 子供の頃「一人四役」に煽られて読んだのだけど、何だかよく理解できなかったので「オレってこんな本、読まなかったんだ」って事にして、記憶を封印してしまった作品。
その後、これって本格モノではないと知って再読した今、「一人四役ってこんなんです」と言われれば、即座に「了解!」と快諾することにヤブサカでないのは、やはり相応にオトナになったのだろう(笑)。

 「で、結局アンタは誰なんだよ?」という件については、(なんせ本格モノじゃないんで)確固たる論理的帰結があるわけでもなく、ひたすら当人の記憶が戻ることを待つしかないのだが、幸い最後の一ページに来てようやく思い出したみたいだ。
 しかし、コイツはとてもじゃないが「イイ奴」とは思えないので「記憶を取り戻したのはいいけど、ちゃんとホントのこと証言したんだろうな」という疑いは残るのだが、最後に本人しか知らないことを言っているので、まあここは信用してもいいのだろう。
 
  だが(いかんせん本格モノではないので)、犯行方法とか共犯関係についての説明がほとんどなく、裏側で何が仕組まれていたのか釈然としない。大体この本のタイトルも、何を意味するのかもうひとつハッキリせず、苦し紛れに辞書を引いてみると「シンデレラへの罠」とも読めるので、「シンデレラっていったい何の喩えなんですか?」と鯨統一郎さんの解釈を聞いてみたい気がした。
 そして今も相変わらず「オレってこの本、ちゃんと理解できたのかな…」と思わせるヘンな作品だけど、まあそれなりに面白かったような気がする(本格モノではないけれど)。

No.2 6点 シーマスター 2008/05/06 20:31
こんなんだったっけ・・・・・・・・・・・

短いから許せるけど読みにくいね・・・・・
翻訳が恐ろしく拙劣なのかとも思ったが、それ以上に原著自体が途轍もなくトッチラカった文体で、訳者は何とか意味が通じる日本語に置き換えるのに目が青くなるほど苦労したが段々メンドくなり直訳羅列・・・・・・・・んなわけないか。

今ではこの程度のヒネリは何てこともないが、本作を本家取りしている綾辻氏を始め、ドンデンが売り物の現代ミステリ作家の少なからずが、こういう作品の影響を受けてるんだろうね。

No.1 7点 あい 2008/04/27 17:51
この作品は一人四役という前代未聞の作品。設定が複雑だが、面白い作品。


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セバスチアン・ジャプリゾ
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