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ミステリの祭典

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フリップ村上さんの登録情報
平均点:7.73点 書評数:26件

プロフィール| 書評

No.6 8点 ルー=ガルー 忌避すべき狼
京極夏彦
(2002/07/17 22:59登録)
販売戦略的にライトノベルを書いてみたというより、他ならぬ京極氏自身が、アニメ・サブカル文化における《闘う美少女》もののひそかな愛好者だったとみるのも充分に「アリ」かも。
それほどまでに楽しんで書いてます。
妖怪ものにおける膨大なウンチクは、確かに当人の血肉となっているだけの凄み、説得力を感じさせるが、所詮は「書物で得た知識」。未来を舞台にした、つまりはイマジネーション一本勝負の世界で、同じクオリティの世界構築を求めるのは酷というものかも。
それよりも私が感動したのは、『赤ずきん』の本歌とりというやや安直な構成を持つこの作品が、「どうして人を殺してはいけないのか?」という問いかけに対する、それはそれで誠意あふれる大人側からの回答としても読み取れるという点。そういう意味でも、若い読者層にターゲットを絞ったのは正解なんだろうな。


No.5 8点 夜の蝉
北村薫
(2002/07/17 22:44登録)
全体の完成度では『空飛ぶ馬』に一歩譲るが、なんといっても白眉は『六月の花嫁』。
いったいなにが《事件》だったのかを明らかにすることが、《解決》と同義になっているという構成の妙。一聴すると時期外れに思える話題が実は……という挿話が、タイトルそのものと相まって、大胆不敵なまでの伏線となっているという語り上手。
日常生活系ミステリにおいて、北村薫がワン・アンド・オンリーの存在であることを、なによりも雄弁に語る一編ではないでしょうか。


No.4 10点 占星術殺人事件
島田荘司
(2002/07/15 23:45登録)
乱歩賞落選の講評で「このトリックを生かすにはコメディにするしかない」と頭からクサされていたのも今は昔。
新本格なんて言葉は陰も形もない《あの時代》にこんなものを書き上げてしまった島田荘司の飛びっぷり、ズレっぷりには、素直に頭が下がります。(それだけに、ここ数年顕著な増長慢ぶりが悲しくもあるのだが)
というわけで、最近の読者の評価が低いというより、リアルタイム読者の感じた衝撃度が高すぎるたのでは、という自戒を持ちつつ、実はこのトリック《○○○○死体》(漢字一文字、あとひらがな)のとんでもなく画期的なバリエーションなんだよ、と思うと……。やっぱり名作だぁ!


No.3 8点 法月綸太郎の功績
法月綸太郎
(2002/07/15 23:33登録)
名探偵はのっぺらぼう。
ロジック主導の短編ミステリとしては、おそらく現時点で望み得る最高のクオリティ。
でも、ここにはもう、ウジウジ悩んだり、グチまみれ小説を書きかけのまま発表したり、アイドル写真集を図書券で買ったりする法月綸太郎の姿はありません。
成長したと受け取るか。変節したと受け取るか。
私個人の意見を言わせてもらえれば、例え現実離れしていようと、物語の中で確かに《その人》として存在するような探偵にこそ、魅力を感じるのですが、いかがなものでしょうか?


No.2 10点 模倣犯
宮部みゆき
(2002/07/15 23:25登録)
あくまで一つの読み方としての提案。
長いです。暗いです。救いがないです。
そう、もはやエンターテイメントの範疇は越えてしまっています。
でも、これは、今、この時代に、誰かが書かなければならなかった物語。
つまり、長いのも救いがないのも、全部ひっくるめてテーマってこと。そんなものを百万部単位で売れる《小説》に仕上げたのだから、一言でいって神業でしょう。
てなわけで、『ピースを主役に』という時点で原作の精神を完膚亡きまでに踏みにじっている映画は、見る気さえ起こりません。


No.1 7点 オイディプス症候群
笠井潔
(2002/07/15 23:20登録)
畢生の大作ともいうべき『哲学者の密室』に比べると、正直ツライかな。孤立した島での連続殺人に対する《本質直観》も、シリーズ前作における《密室の本質直観》ほどの説得力はなし。笠井潔と名を聞けば、正面切って批判するのも勇気がいるが、ミステリーとしての出来は……。
でも、それでも良いの。なぜってこれは矢吹駆というスーパー・ヒーローを主役にした冒険小説なのだし、自意識過剰のフランス娘の一人称による大河すれ違いロマンスなのだから。本筋そのものより、ほとんど《ダーク・ピット》シリーズ並みに大風呂敷のイリイチの陰謀と、揺れ動くナディアの恋心が読みどころと断言しちゃいましょう!

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