道徳の時間 |
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作家 | 呉勝浩 |
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出版日 | 2015年08月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 5点 | E-BANKER | |
(2021/03/08 16:24登録) 第61回の江戸川乱歩賞受賞作にして、当然作者のデビュー長編。 謎めいたタイトルが以前から気になっていた作品なのだが・・・ 2015年の発表。 ~連続イタズラ事件が起きているビデオジャーナリストの伏見が住む町で陶芸家が殺される。現場には『道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?』という落書きがあり、イタズラ事件との類似から同一犯との疑いが深まる。同じ頃、かつて町で起きた殺人事件のドキュメンタリー映画のカメラの仕事が伏見に舞い込む。証言者の撮影を続けるうちに、過去と現在の事件との奇妙なリンクに絡め取られていく・・・~ 他の方も書かれてますが、乱歩賞審査での池井戸潤氏の選評に頷かれる方が多いように思う。 曰く、①『まず、過去の事件と現代の事件が結びつかないこと。せめて・・・略』②『選考会で最も問題になったのは主要登場人物の背景である』③『文章がよくない。大げさな描写は鼻につくし、誰が話しているかわからない会話にも苛々させられる。さらに最後に語られる動機に至っては、まったくばかばかしい限りで言葉もない』 ・・・酷評である。 出版に当たっては手直しされた箇所もあったろうと思うので、選考会時の原稿とは異なるのかもしれない。 でも、②はともかく、①と③は首肯してしまう・・・かな。 ①については、要はプロットのまとまりの問題だろう。複数の筋が時間軸を超えて並行して語られるのだが、どうにも整理されてない。ラスト、一応の解決が付くわけだが、結局?で終わった筋もあった。 ③はかなり手直ししたのかな? まぁデビュー作だしね。多少の粗はやむなしという気はするんだけど ただ、受賞することとなった理由として、辻村深月氏が言及している「続きはどうなるのか」と思わせる作内の謎が際立っていた、という点。確かに、ミステリーとしてこれは外せないポイントなのだろう。これについては、「まぁそうかな」という感想。いずれにしても、「作家」としての腕前はまだまだこれからという読後感。 他の作品を手に取るのかというと・・・やや微妙。 (他者の感想の引用ばっかで申し訳ございません。でも、一流作家は選評の文章も読ませるね) |
No.2 | 6点 | パンやん | |
(2017/04/23 10:21登録) 賛否溢れる選評が面白い乱歩賞受賞作。ミステリーとしての謎かけが抜群で、どう転がっていくのか気になって、時を忘れて一気読み。確かにちょいとしたゴチャゴチャ感や、真相とのバランスは取れているとは言い難いが、最後まで楽しめましたよ。『道徳』の授業って何をしてたのかなあ。 |
No.1 | 4点 | HORNET | |
(2015/09/27 17:35登録) ビデオジャーナリストの伏見が住む鳴川市で、地元の名士である青柳家の陶芸家、青柳南房が不審な死を遂げた。自殺として淡々と処理されていくが、以前からよくない噂が絶えなかった南房の死にはさまざまな憶測が飛ぶ。そんな中、現場に異様なメッセージが残されていたことから事件の様相は急変する—「道徳の時間です。殺したのは誰?」 一方、鳴川市で昔起きた殺人事件。既に逮捕され、犯行も認めて服役している向晴人。そのドキュメンタリー映画を作成するという越智冬菜という女性に、映画のカメラマンとして依頼を受ける伏見。有能なことは間違いないが、何か含むところがありそうな越智に疑念を抱きながらも、依頼を受ける伏見だったが―。 意味ありげにさまざまな謎が提示される前半、その謎の立て方は確かに魅力的で、引き込まれるものがあった。だが、だからこそ高まった期待を受け止めるだけの結末を読者は求める。その点で完全に期待を裏切られた。「……なんだそりゃ」が正直な感想。 巻末の、池井戸潤の選評が全て。まったくもってその通りだと非常にうなずける。 |