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ミステリの祭典

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海妖丸事件
月輪龍太郎

作家 岡田秀文
出版日2015年09月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 E-BANKER
(2021/07/31 20:31登録)
月輪龍太郎を探偵役とするシリーズの三作目。
今回は横浜~上海間を行く豪華客船が舞台。(いわゆる「船上ミステリー」だな)
2015年の発表。

~凄惨な黒龍荘事件から一年、役所勤めの杉山は上海出張を命じられる。一方「月輪萬相談所」で探偵業を営む月輪とその助手・氷川蘭子は結婚し偶然にも杉山と同じ豪華客船「海妖丸」で新婚旅行に向かうことに。出港当日、横浜港の待合所では、伯爵夫人・貿易商・富豪など多士済々な乗客たちが揃う中、「上海ハ汝ラヲ死出ノ旅路トナラン」との不吉な予告状が届く・・・~

これは・・・船上ミステリーだし、やっぱり「ナイルに死す」当りを意識しているのかな?
メインの連続殺人に加えて、宝石泥棒事件や脅迫事件などの脇筋が並行しているのも「ナイルにー」を意識してるっぽい。ただ、それらの脇筋は終章に達する前に解決してしまい、正直メインプロットに有機的にリンクしているとは言い難い。(単なる「賑やかし」的な意味合いしかない)
一番問題なのは、やはり、〇れか〇りトリック。さすがにこれはないだろう。
いくら明治時代とはいっても、あれしきの変〇で気付かない訳ないと思うのだが・・・。まぁ、こんな大掛かりな仕掛けとは分からなかったにせよ、ある登場人物があまりにも違和感たっぷりだから、ミステリーファンなら絶対にピンとくるレベルだろう。これはいただけない。

あと、前作の「黒龍荘の惨劇」の書評でも書いたけど、どうも筆致がねぇー 淡々としすぎなのが気になる。
あまりに仰々しいのもうるさいけど、ここまで癖がなさすぎるのも、どうにも盛り上がりに欠ける気がするし、主要キャラにしても、もう少し魅力的な肉付けが必要ではないかと感じる。

と、ここまで批判的な内容を書いてきたけど・・・って、特段褒めるところがないのが残念。
まっ、一言でいうなら、三作目で早くもネタ切れということかな。(そうではないことを祈る)

No.1 5点 kanamori
(2016/01/21 22:16登録)
横浜港から上海に向かう豪華客船に乗り合わせた探偵・月輪と地方官吏の杉山の腐れ縁コンビだったが、出航直前に届いた不穏な予告状のとおり、船上の仮面舞踏会の夜に殺人事件に遭遇。さらに、宝石の盗難や脅迫事件につづき、第2の殺人までが起きる--------。

探偵・月輪シリーズの3作目。明治時代を背景にした船上ミステリーで、他の船客はオフリミットな一等客室というクローズド・サークルものになっています。
設定自体は大好物ではありますが、前2作と比べると仕掛けの部分が地味で、やや面白さが減退している印象。まあ、前作の「黒龍荘の惨劇」が強烈すぎたというのもありますが。
初っ端に井上馨という大物の特別出演があるものの、明治モノの要素がますます希薄になっているのもマイナス要因です。メインの〇〇トリック自体は、その時代ならではという点で、”明治”の意味はありますが、これはこれで危なっかしい綱渡り的トリックです。あと、豪華客船とくれば伯爵夫人に宝石盗難、というのも定番すぎて既視感がありますね。
なんだか文句ばかり並べた感じですが、ラストの演出はしゃれています。

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