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ミステリの祭典

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ジャイロスコープ

作家 伊坂幸太郎
出版日2015年06月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 まさむね
(2015/11/08 18:43登録)
 アンソロジーや雑誌に掲載された短編に書き下ろし短編を加えた、作者初の文庫オリジナル短編集。
 ミステリーとは言い難い短編が多くを占めますが、逆に作者の良さを詰め込んだバラエティに富んだ短編集と言えるのかもしれません。
 好きなのは、「浜田青年ホントスカ」、「一人では無理がある」、「彗星さんたち」かな。「if」も掌編として、なかなか面白い。すべての短編の受け皿として書き下ろされたであろう、最終話「後ろの声がうるさい」は、いかにも作者らしい。一方で、「ギア」と「二月下旬から三月上旬」は、個人的に合わなかったかな。
 個人的に、伊坂サンの作品は長編よりも短編の方が好みなのですが、その辺りが巻末のインタビューで語られていて興味深かったですね。

No.1 7点 E-BANKER
(2015/08/23 21:06登録)
何と、これが初の文庫オリジナルの短篇集。
デビュー以来休むことなく秀作を発表し続ける作者はとにかくスゴイのひとこと!
今回も“伊坂らしい”洒脱でどこかホッとさせられる台詞まわしを期待。

①「浜田青年ホントスカ」=創元推理文庫のアンソロジー挿入ということで、本作で一番ミステリーっぽい一編。いかにも伊坂ワールドに登場しそうな主役級二人が織り成す不思議なドラマと意外性のある展開。「稲垣さん」の放つ台詞もいかにも・・・って感じだ。「ホントスカ」が口癖という浜田青年が実は・・・(ネタバレだから言わない)
②「ギア」=作者本人が「あとがき」で「たまには起承転結のない短篇を・・・」ということで書いた作品。確かにラストは唐突に終わるのだが、要は謎の生物(「セミンゴ」)を書きたかっただけなんだろ! なんだ「セミンゴ」って??
③「二月下旬から三月上旬」=何だか歳時記のようなタイトルなのだが、SF的要素を盛り込んだ一編。時系列をいじっているので、読んでいるうちに何がなんだか分からなくなる感じが好きかどうか・・・ということだろう。
④「if」=まさにタイトルどおり。「もし(過去)・・・だったら」という作品。短い分量なのだが、読みながら「分かる分かる」って思ってしまった。
⑤「一人では無理がある」=何を書いてもネタバレになりそうな一編。最初は「いったい何の話?」って思うのだが、その謎はすぐに判明する。(「作者あとがき」を読むと、最初はラストにネタばらしをするつもりだったとのことだが・・・)
⑥「彗星さんたち」=一時マスコミでよく取り上げられた、新幹線の清掃チームを下敷きとした話。とにかく「いい話」で、読んでいるうちに何だが泣きたくなるのだが、実は“洒落た”趣向が凝らされていることが途中明らかにされる。(さすがだね)
⑦「後ろの声がうるさい」=本作発表に当たって、新たに書き下ろされた一編。要は連作短篇風な「まとめ」を意識した作品なのだが、こういうことを無難にこなしてしまうのが作者の腕という奴かな。

以上7編。
とにかく「さすが」のひと言。以上書評終わり・・・でもいいのだけど、もう少しだけ。
今回はあとがきでの「作者インタビュー」を興味深く読ませていただいた。
最後に長編と短編の違いに触れているのだが、短編の方が読者の期待に堪えるべく「面白い仕掛け」を考えているとのこと・・・
なるほどねぇ・・・

比較的短い期間でこれだけ佳作を量産できる作者って、もはやバケモノですなぁー
もう尊敬するしかないって感じ。
(一番の好みは⑥かな。①も結構面白いよ!)

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