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ミステリの祭典

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ホテル1222
ハンネ・ヴィルヘルムセン シリーズ

作家 アンネ・ホルト
出版日2015年09月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 5点 E-BANKER
(2024/06/09 13:18登録)
女性捜査官「ハンネ・ヴィルヘルムセン」を主人公に据えたシリーズの八作目に当たる作品。
ちょっと前にシリーズ前作である「凍える街」を読了して、作者に対しても少し興味が出ていたので、次作も手に取った次第。
2007年の発表。

~雪嵐のなか、オスロ発ベルゲン行の列車が脱線、トンネルの壁に衝突した。運転士は死亡、負傷した乗客たちは近くの古いホテルに避難した。ホテルには備蓄が多くあり、救助を待つだけのはずだった。だが翌朝、牧師が他殺体で発見された。吹雪はやむ気配を見せず、救助が来る見込みもない。さらにホテル別棟の最上階には正体不明の人物が避難している様子。乗客のひとり、元警官の車椅子の女性が乞われて調査に当たるが、事件は一向に解決せず、またも死体が・・・~

紹介文のとおり、本作、場面設定でいえば、「嵐のために外界から隔絶された究極のCCで他殺体が1つ、また1つ発見される」という、古き良き本格ミステリーのフォーマットが採用されている。
巻末解説によると、作者自身も敬愛するA.クリスティの諸作(敢えていうと「そして誰もいなくなった」と「オリエント急行の殺人」)のオマージュを狙った云々と書かれている。
ただし、作品のプロットや雰囲気はかなり異なっている。

はっきり言って、本格ミステリーの風味は相当薄味だと思う。一応、最後にはハンネが避難した乗客を集めて真犯人の指摘を行うのであるが、真犯人の絞り込みというか、その辺の興趣は個人的には殆ど感じられなかった。
伏線が全くないとは言わないけれど、それ以外の雑事の描写が多すぎて、殺人事件の解明そのものに集中できないと言えばいいのか・・・。
これが北欧ミステリーの特徴? どちらかというと、極限状態に追い込まれたハンネの心象や過去、同居人等への思いを語る場面が多くて、多分に映像向きの作品のように思えた。

あとは、これも巻末解説の受け売りだけど、ノルウェーという国に対する作者なりの考察を作中に反映させているのかな? 前作でもそうだったけど、雪また雪に埋もれる街、人々は割と敬虔だけど、どこか秘密を抱えているような人が多いetc。本作でも〇〇人、〇〇人という表記が結構多いし、ハンネの感覚も人種で分かれている気がする。

ということで、結構ヘヴィーな読書になった。
単にCC設定が好きだから、という理由だけで本作を手に取ると、「なんか違う!」っていう感想になるかも。
本作はシリーズ八作目ということだけど、現状簡単に手に入るのは前作と本作のみということのようなので、うーん、しばらくは他作品は読めない(読まない?)かな・・・
ただし、「つまらない」という評価ではないので、悪しからず。

No.2 6点 YMY
(2024/03/25 22:25登録)
列車が脱線事故を起こし、乗客たちは近くのホテルに避難する。ところが、そこで殺人事件が発生した。ホテルに集まった二百人近い人間の中に潜む真犯人は。
荒れ狂う雪嵐、相次ぐ死者、反抗的な少年、ヒステリックな評論家、ホテル最上階にいる謎の客。混迷を極める事態に、車椅子の元警部ハンネ・ヴィルヘルムセンが直面を強いられる。謎解きそのものより、ノルウェーの社会の縮図のような人間模様と、彼らを襲う極限状況の迫力が印象的。

No.1 6点 nukkam
(2015/10/29 11:29登録)
(ネタバレなしです) 2007年発表のハンネ・ヴィルヘルムセンシリーズ第8作ですが、それまでのシリーズ作品と比べて色々と新たな試みの見られる意欲作だそうです。ハンネが警察を辞職していること、両足を失った身体障害者となっていること、そしてハンネを語り手にした1人称形式にしていることなどがシリーズ異色作の所以のようです。アガサ・クリスティーの「オリエント急行の殺人」(1934年)と「そして誰もいなくなった」(1939年)を意識した作品ではありますが、吹雪の山荘ならぬ吹雪のホテルに100人を超す遭難者を集め、殺人事件の謎解きのみならず極限状態での緊張感もたっぷりと織り込んだ独特の世界を築き上げることに成功しています。ハンネは正式の捜査官でない上に積極的に動ける状態でないので謎解きがなかなか進展しないもどかしさがありますがそれも作者の計算通りかもしれません。最後は容疑者が一堂に集まってハンネの推理説明で犯人が指摘されるという本格派推理小説ならではの決着が見られます。ただその後の最終章「風力階級12」はどうにもすっきりせず、蛇足のように感じられましたが。

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