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ミステリの祭典

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曲がり角の死体
マクドナルド警部

作家 E・C・R・ロラック
出版日2015年09月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 6点
(2023/09/19 20:51登録)
ロラック初読です。70冊以上の作品数がありながら、『ジョン・ブラウンの死体』が1997年に国書刊行会から出版されるまで、日本ではほとんど無視されてきた英国本格派黄金時代の女流作家。
曲がりくねった道に停められていた自動車の中で、評判の悪い実業家が一酸化炭素中毒で死んでいるのが発見されるという事件ですが、殺されたのはたぶん別の場所だろうということは、早い段階で指摘されます。その意味では原題 "Death at Dyke’s Corner" はちょっと違うんじゃないでしょうか。巻頭、周辺地図の裏に「登場する人物と地名はすべて架空のものである」とされていますが、その巻頭地図を参照しながら読んでいきました。
丁寧な捜査は飽きさせませんし、伏線もしっかりしています。ただクライマックスでの犯人のセリフの一部は、少なくとも藤村裕美氏の翻訳ではアンフェアと言うかあり得ないと言うか。

No.2 7点 弾十六
(2021/04/13 03:28登録)
作中年代は「一月二十一日金曜日(p28)」と明記。直近では1938年が該当。マクドナルド警部が「まだ45歳」とあり、誕生日が来ていないだろうからぴったりだ。p154のブツも当時話題になっていたようだから1938年1月の事件で良いだろう。
英国物価指数基準1938/2020で67.75倍、£1=9282円。作中、ガソリン6ガロン=9s.6d.とあり1リットル換算だと161.6円。
冒頭の車のシーンは上手い。女性作家とは思えない感じ。車種も豊富に明記されていて、非常にイメージがわきやすい。(モーリス、ダイムラーV8、オースティン、ヒルマン、ヴォクスホール、ロールスロイスなど)
当時の英国社会の雰囲気の描写が上手く、かつさらりと描かれて、そしてミステリとしてもちゃんと出来ている。都会と田舎、伝統と新潮流のせめぎ合いが裏テーマ。最初のつかみからの展開も良く、結構、起伏に富んでいて面白い。人物の描き方は軽めだが、イメージをよく捉えていると思う。最近知ったが、ボルヘスもロラックを評価していて、南米ミステリ叢書「第七圏」でも#22 Black Beadle 1939、#36 Checkmate to Murder 1944(死のチェックメイト)が選ばれている。
マクドナルド警部ものには音楽が付き物、と思っていたが、今回は残念、登場しない。
原文入手出来なかったのでトリビアはなし。(あっ、ホイストは男性向け知的ゲーム、というイメージらしい。まあ掘れば色々トリビアが出てくるディテール豊富な作品。もっとロラックさんを読みたいなあ。特に戦前。出版社の皆さま、どうぞよろしく。)

No.1 6点 nukkam
(2015/09/25 13:58登録)
(ネタバレなしです) 1940年発表のマクドナルドシリーズ第18作の本格派推理小説です。事故車から発見された死体に始まった事件は殺害方法の謎、車の行き先の謎、複雑な人間関係と混迷の度合いを増していきます。解決に唐突感があり、最終章でマクドナルドは「捜査は行き当たりばったり」「早々とクライマックス来て、爆発が疑惑を一掃したと言ってもいい」と結果オーライのように述懐していますが、その後の真相説明では非常に丁寧に謎解き伏線を回収しています。

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