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ミステリの祭典

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大幽霊烏賊 名探偵 面鏡真澄

作家 首藤瓜於
出版日2012年06月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 虫暮部
(2019/07/16 16:08登録)
 最初の数章を読んだ時点で否応無しに想起させられるのは『ドグラ・マグラ』。衒学趣味は嫌いじゃないし、伏線回収など期待してはいなかったが、あっけなく不時着して四散したのは残念。作者は物分かりが良過ぎだ。ここまで飛び上がったのだから、狂人の論理を駆使して、もう少し踏ん張って欲しかった。

No.2 6点 小原庄助
(2017/11/15 10:07登録)
江戸川乱歩賞を受賞したデビュー作「脳男」とは大きく異なるタイプのサイコミステリ。
昭和の初め、新米医師の使降は、日本で最初にできた精神科専門病院へ赴任してきた。実在する病院をモデルに、昭和初期の精神医療の実態を背景にしながらも、作者ならではの迷宮世界を構築して、読者をどこまでも惑わせる小説になっており、あらゆる登場人物が怪しげだ。
いくつかの仕掛けや真相は、勘のいい読者ならば途中で気付く場合もあるでしょう。だが、そうした細部だけにこだわるのは、やぼというもの。
さまざまな人物の心の謎、精神の不可思議な世界をめぐるミステリとして堪能しつつ、不気味さの漂うホラー及び壮大なほら話の一種としてたっぷりと楽しんでほしい。

No.1 6点 メルカトル
(2015/08/04 21:44登録)
昭和初期、舞台は愛宕市(おたぎ)の精神病院。この設定がのちのち効いてくるのだが、詳細はネタバレになるため控えたい。
主人公の使降はまだ建てられて年数の浅い精神病院、葦沢病院に赴任してくる。だが、医師たちばかりか看護婦たちまでも、一癖も二癖もある人物ばかり。更に入院患者の中には「三狂人」と使降が呼んでいる一風変わった人たちがいる上、「黙狂」という彫像のように動かない患者もいた。いったい彼の正体は?というのが、全編を通じての大きな謎になっている。
他にも、巨大鯨を襲う超巨大烏賊、漁船に一人取り残された漁師の異常な行動、クラシック音楽の薀蓄、周りの男たちを籠絡しようとする美人看護婦、後頭部に穴の開いた男などなどの要素が絡み合って、一種異様な世界観を作り出している。しかし、全体的な雰囲気は決して暗いものではなく、何事にも前向きに対処していこうとする主人公に引きずられて、最後まで飽きずに読むことができる。
なんだか小難しそうな内容に感じるかもしれないが、そんなことはなく、言ってみれば総合小説としてのエンターテインメントと呼んでもよいのかもしれない。無論、ミステリとしての体裁も整っている。
やや残念なのは、名探偵と謳われている面鏡真澄の出番が少なすぎることだろう。

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