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ミステリの祭典

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怪盗グリフィン対ラトヴィッジ機関
怪盗グリフィンシリーズ

作家 法月綸太郎
出版日2015年07月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 5点 青い車
(2016/05/22 15:37登録)
 どうも最近の法月さんは『キング』で労力を使いすぎたのか、自分の書きたいものを奔放に書いているという感じがします。それが悪いとは言いませんが、少なくとも僕個人としてはもっとストレートな本格が読みたいです。
 本作も途中までは『絶体絶命』と同じくポップなユーモアが溢れていて楽しかったのですが、終盤はほとんど理解不能でした。書こうと思えば普通のミステリーにもできたはずなので、もしかしたら狙ってやっているのでは?とさえ思えます。不定期連載していた『挑戦者たち』も非本格なので僕が求めているような作品は当分お預けかもしれません。

No.2 5点 虫暮部
(2015/09/07 09:29登録)
 旭ハジメのイラストがナイスな素敵な本。
 やけに伝聞の多い構成が、量子論的な世界の曖昧さの表現に一役買っている。

 trotter =早足(トロット)の調教を受けた馬。ということは、P・K・トロッターというネーミングは、ディックが馬並みという洒落か。まあ下品。

No.1 5点 kanamori
(2015/08/16 00:04登録)
”あるべきものを、あるべき場所に”、を信条とする怪盗グリフィンの今回のターゲットは、伝説的SF作家P・K・トロッターの未発表原稿「多世界の猫」。ところが、持ち主の大学教授に接触をはかるも、猫のぬいぐるみを着た謎のグループに襲われ、原稿を奪われてしまう----------。

怪盗グリフィン・シリーズの第2弾。
回収を依頼された原稿を巡って、謎の集団やCIA、ペンタゴンなどの組織が絡む謀略ものの冒険スリラーというのが基本プロットなんですが、なにせ題材がフィリップ・K・ディックをモデルにしたSF作家による架空の量子理論SF小説なので、有名な思考実験”シュレーディンガーの猫”のパラドックスをはじめ、波動関数の収縮、多世界解釈やら、量子コンピューターなどの難解な最先端科学ネタが満載、かなりハードSF寄りの作品になっています。謀略スリラーとして読んでいても着地点はもろにSFなので、ミステリを期待すると残念な読後感になってしまいます。最後に飛び出す”トンデモ系”のネタは『ノックス・マシン』に通じるテイストを感じました。
ロダンの「考える人」像にあるイタズラ書きが、ブルース・リーの名セりフ”Don't think, Feel!”(©「燃えよドラゴン」)なんてギャグが出てくるように、作者の稚気と遊び心を楽しむべき作品といえそうです。

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