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ミステリの祭典

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作家 北方謙三
出版日1983年03月
平均点7.33点
書評数3人

No.3 7点 あびびび
(2019/12/12 12:28登録)
北方さんの風貌そのものがハードボイルドで、主人公の顔が彼の顔になっている。元は筋もので、今はスーパー、喫茶店を経営し、静かに暮らしていた男が土地売買に絡む騒動で、熱い血潮がたぎっていく。どう抗っても男の人生は変わらなかった、そんなストリーがどこか共感を呼ぶ。

今となってはありふれたストリーだが、物語の面白さは変わらない。

No.2 7点 tider-tiger
(2017/11/01 20:37登録)
とある自由業から足を洗い、小さなスーパーを経営している滝野和也だったが、悪質な嫌がらせに遭い、それに対処しているうちに過去の荒ぶる血が甦り、過去が自分を引き戻そうとしていることにはっきりと気付いた。

文章はいい(とりわけ好きというわけではありませんが)。導入がいい。この導入がダメだと感じる方はおそらくこの作品は合わないでしょう。エンタメとしてつまらない部分がほとんどない。人物は重要度に応じて相応に書き込まれ書き分けられている。プロットはやや一貫性に欠けるも最初から最後までテーマに沿って描かれ、テーマに貢献し、結果的にそれが成功している。刑事の視点が存在していることで物語にさらなる厚みが加わった。
主人公の行動に理解し難い部分が多々ありますが、これは物語のテーマ上そうでなければならないし、瑕疵ではないと考えます。
主人公が最後に「○○」と、呟くが、これはいくらなんでもくどいし不自然。
もう少し読者の読解力を信頼していいのでは。
気になるのはうまさが少し鼻につくところ。綺麗にまとめ過ぎてしまったのではないかと。
それから、どうしても古臭さがつきまといます。暴対法施行前の臭いがプンプン。初読時にはそれほど古いとは感じませんでしたが、今回の再読では……。自分が知っている時代、知っている感覚が描かれているせいかもしれません。
北方ハードボイルドは忘れられた存在になりつつありますが、あと十年もすれば再評価の機運が盛り上がるのではないかとそんな風に思っています。

No.1 8点 斎藤警部
(2015/07/01 17:31登録)
終盤近くまでハードボイルド・ミステリと勘違いして読んでしまったが、それでも大満足の出来!
スーパーマーケット乗っ取り攻防の中で、堅気になりきった主人公が徐々に野獣へと戻って行く展開かと思いきや、最初っからブッ飛ばしててびっくり! そうそう、この小説は書き出しが最高に引きずり込む。そのままいつまでも引っ張り続ける。清張さんと同じ匂いが結構した。敵役の中年刑事、味方(たぶん)の探偵、旧い友、妻、愛人の父親(ダメな奴!)、雇った店長x2、ヤクザや不良たち、程度の差はあれ造形のくっきりした魅力的な準主役~脇役~端役がそれぞれの持ち場で躍動。そいや中年刑事のキャリア上司が、チョイ役だが妙に魅力ある奴だった。

北方さんはこの本出した時まだ三十台半ばだったんですね、驚きです!

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