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ミステリの祭典

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[映]アムリタ

作家 野崎まど
出版日2009年12月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 7点 人並由真
(2020/11/04 14:59登録)
(ネタバレなし)
「僕」こと、井の頭芸術大学の役者コースに在籍する二見遭一(あいいち)は、学友で撮影コースの美人・画素(かそ)はこびから、学内サークル「キネマ・マグラ」での映画製作企画の主演男優にと誘われた。遭一は「天才」と噂される年下の美少女で、今回の映画『月の海』の監督を務める最原最早(さいはらもはや)と対面。その彼女から、この映画の全編の絵コンテを渡されるが、自宅のアパートで気がつくとそのコンテを二日間以上にもわたって熟読していた。言いようのない体験を経て、映画制作に没頭する若者たちだが。

 異才・野崎まどのデビュー長編。
 評者と野崎作品との接点は、しばらく前に題名とその設定に惹かれて『死なない生徒殺人事件』を読了。あとはテレビアニメ『正解するカド』を観たくらい。本作の存在は数年前に本サイトで知って「この作品がミステリ?」と興味が湧き、ブックオフで100円均一の状態の良い本(旧版の初版で帯つき)を購入しておいた。

 それで昨夜、その前に読んでいた長編がやや早い時間にかたづいたので、何かもう一冊と思い、ページ数そのものは少なめ(本文250ページ前後)な本書を読み出す。
 いや、たぶん長さに見合わない何らかのインパクトがあるだろうと予期はしていたので、これまでは読むタイミングをうかがっていたところもあるのだが。

 それで一読……。
 ……ああ、こういう話ね、という割と冷静な感覚と、かなり心の原初的な部分で衝撃を受けた感触があい半ば(どちらかといえば後者)。
 これから読む人のネタバレになるので、感想の方向やジャンルの確定すら言わない方がよい種類の作品だが、ネタそのものよりも、小説作りの技巧と語り口の練達さで勝ちを取った一冊ではある。読後、就寝して起床して、まだ余韻が残っている。ああ……(以下略)。
(ちなみに本サイトの先行するみなさまのレビューを読むのは、誠に恐縮ながら、ネタバレになる危険性を踏まえた自己責任でお願いいたします。……警告はしたからね・汗。)
 
 なお読後にAmazonのレビューを覗くと、本作の世界観はのちのちの野崎作品『2』で先述の『死なない~』をふくむ野崎著作の諸作と統合的にリンクするそうである(これは『2』を先に読まないように、という老婆心からあえて書かせていただく)。
 評者はこのあと、どうこの作者の作品と付き合っていこうか、そもそも……と思案中(汗)。

No.3 5点 ボナンザ
(2015/07/10 07:25登録)
ラノベとしてみた場合驚くべき作品ではある。
ただ、そこまで出来る映像ってのが非現実的かな。

No.2 4点 メルカトル
(2015/07/09 22:04登録)
再読です。
これは激しく読者を選ぶ作品であろう。そのひとつは、最原の天才性を肌で感じることができるか、或はそれに共感できるかどうかで決まるとも言えそうである。ちなみに私は選ばれなかった者だ。
どれだけ最原が映画で何でもできる天才だとしても、実際作品の中ではその具体性が全く描かれていない。ただただ表層をなぞるのみで、その現象の一部をさらりと表現しているに過ぎないではないか。これでは、驚愕に値するような天才と認めるわけにはいかないし、彼女をどうとらえていいのか判断できない。
一方、本作は映画製作にかかわる若者たちの群像劇の面も持ち合わせているが、誰も彼も中途半端にしか描かれていないし、映画に関連するコアな部分を鋭く抉っているわけでもない。いずれにしても、個人的には褒められた出来ではないなと思う。また、贔屓目に見てもミステリではないだろう。

No.1 9点 あさぎ
(2015/06/21 02:37登録)
鬼才・野崎まど、驚愕のデビュー作。

本作は一見、最原最早というひとりの天才を中心に、映画作りに情熱を賭ける青春小説以外の何物でもない。
だが、その天才の〝天才性〟が常識を突き破るとき、物語は全く別の何かに変貌する。
何を書いてもネタバレなのだが、最原最早の異形の天才性が導き出す現象が、驚愕の真相を導き出すという意味で、本作は紛れもなくミステリーであり、同時にSFであり、あるいはまたホラーでもある。
ジャンルの枠すら軽々と飛び越えて予想だにしないところへ読者を連れて行く傑作。

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