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ミステリの祭典

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旅のラゴス

作家 筒井康隆
出版日1986年09月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 6点 E-BANKER
(2015/05/13 20:40登録)
1986年発表。
最近書店で平積みになっていて、気になっていた作品を今回読了。
独特の味わいを持つ連作短篇集(或いは連作長編)。

①「集団転移」=これっていわゆる「ワープ」ってやつだよね。主人公ラゴスとともに、本作の主要キャラとなる「デーデ」も登場。
②「解放された男」=転移した村にいる暴れん坊「ヨーマ」。彼が暴れる理由は人の心が読めてしまうからということなのだが・・・それは悲しい能力なのだろう。
③「顔」=旅先で出会った似顔絵書きの男。その男は依頼人が“こうありたい”と願う姿を似顔絵にできる能力を持つという。
④「壁抜け芸人」=タイトルどおり、壁を通り抜けられる能力を身に付けた男。好意を持つ女性の部屋へ壁抜けしようとした男は何と・・・アレを残したまま壁抜けに失敗する。
⑤「たまご道」=この大蛇って「ガラガラヘビ」だよね。音がするんだから・・・
⑥「銀鉱」=何と捕まって奴隷となってしまうラゴス。連れて行かれたのが銀山。奴隷として働くうちに、その能力を徐々に発揮し始めるラゴス。
⑦「着地点」=銀山から運命の女性ととともに逃亡したラゴス。でも彼はひとりで旅を続けなければならない・・・
⑧「王国への道」=南方へ旅を進めるラゴス。行き着いた町で伝説の書の読書に耽る。
⑨「赤い蝶」=久し振りに戻ってきた「シュミロッカ」の街。ラゴスは思いを寄せ続けた女性の姿を探すのだが・・・
⑩「顎」=崖地に追い込まれ窮地に陥るラゴスの身に・・・
⑪「奴隷商人」=ここでまた奴隷にされる運命ってなに・・・
⑫「氷の女王」=あの女性が何と「氷の女王」になっていた、って数奇な運命だ。

以上12編。
これってファンタジー? SF?
とにかく独特の世界観を持つ物語。
まるでひと昔前のRPGのようだ。

文明とか人間とか哲学的なベースがあるのかもしれないが、そんな難しいことは抜きに、とにかく作品世界にのめり込んでしまった。
さすがのクオリティという感じ。
分量も手頃なので、旅のお供に是非!

No.2 7点 haruka
(2015/04/18 23:31登録)
文明を失った代わりに超能力を身につけた人類の住む架空の世界で、主人公のラゴスが旅をする話。文庫で200ページちょっとなので決して長くないのだが、壮大なスケールとロマンを感じる作品。ミステリではないが、おススメです。

No.1 6点 メルカトル
(2015/04/18 21:29登録)
時代設定も場所も不明だが、主人公のラゴスが地球上のさまざまな国を、一風変わった方法で旅する連作長編。
文体に臨場感があふれ、実に適切な語彙を選択しているため、読者は自然異国を旅して周り、行く先々で個性的な人物と出会うような疑似体験をすることになる。一つ一つのエピソードは短いが、何とも言えない雰囲気を漂わせ異国情緒を味わえる。
ラゴスはナイス・ガイではあるが、実際学究肌で、何十年も旅する間に一国の王に祭り上げられたり、大学の教授になったりと、まさに波乱の人生を送るのだ。そして最後に向かう先は・・・。
『壁抜け芸人』『たまご道』など奇想たっぷりのエピソードも楽しい作品だ。

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