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ミステリの祭典

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福家警部補の追及
福家警部補シリーズ

作家 大倉崇裕
出版日2015年04月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 E-BANKER
(2023/01/28 14:53登録)
大人気?倒叙シリーズの続編。今回は中編二作という構成。
相変わらず、なかなか警察手帳が見つからないという「お約束」のくだりが微笑ましい。
単行本は2015年の発表。

①「未完の頂上」=世界の最高峰を目指す登山家の親子と彼らを支援する実業界の大物経営者の男。確執から男を殺すことを決意した父親は、「山男」にしか思い付けないアリバイトリックを仕掛けるのだが、そこに福家警部補が立ち塞がる。警部補って、登山もプロ並みなんて・・・(ついでにボルダリングも)

②「幸福の代償」=動物をこよなく愛する女性と、その義兄で動物虐待も厭わないブリーダーの男。女性は緻密なアリバイトリックと偽の犯人役を用意し男を殺害する完全犯罪を企んだが、そこにはやはり彼女が・・・

以上2編。
両方とも一定の水準にはあると思う。
本シリーズの正調のフォーマットに則っているし、福家警部補の異常なまでに鋭いカンと捜査力の前に徐々に追い詰められていく真犯人たちの心情にシンクロすることができる。
福家警部補は最初からコイツが怪しいというカンで動いていると思えるのだけれど、そこら辺りはいつも語られないので、ちょっとモヤモヤする感じは残る。(まぁお約束といえばお約束だが)

ただ、ちょっと型にはめすぎかなぁーという気にはさせられた。
福家警部補のキャラを含めて、変化球的な作品や、ガリレオシリーズの湯川のように探偵自身の変化や成長を描くというのもアリかななどと考えてしまう。
ただ、こういうシリーズはコロンボしかり、古畑任三郎しかりで、“お決まり”のフォーマットや決め台詞が楽しいというファンも多そうなので、そこいらの匙加減が難しいとは思いますが・・・
ということで、評価はこんなもんかな。
(個人的には①>②かな)

No.2 6点 青い車
(2016/09/24 01:02登録)
 シリーズ4作目の本作は長めの話がふたつ収録されています。個人的には、一方はけっこう好きなのですが、もう一方は不満の残る出来でした。
以下、感想です。
(一部、刑事コロンボのネタバレを含んでいます)


①『未完の頂上』 著名なベテラン登山家による山を利用した犯罪。決め手は明らかに『愛情の計算』を意識したものでしょう。そこで評価を落としている人もいるようですが、使い方は元ネタよりうまく、しっかり発展させているので僕はありだと思います。長めの頁数を使ったのに見合う人間ドラマです。
②『幸福の代償』 こちらはちょっと好みでありませんでした。犯行に手が込み過ぎていて不合理に陥っている気がしますし、唐突に証拠を突きつける幕切れからもギクシャクした印象を受けます。『死者のメッセージ』のような犯人に同情を寄せる作品としても磨き上げ不足に思います。

No.1 6点 kanamori
(2015/05/08 18:55登録)
女性刑事・福家警部補シリーズの第4弾。今回は中編2作収録。
倒叙形式のミステリといっても色々とタイプが分かれますが、目を付けた人物と直接対峙し、対話形式でじわじわと犯人を追い詰めていくスタイルは、刑事コロンボや古畑任三郎の直系といえます。最近はなんとなく福家の振舞いまでもコロンボに似てきた気がします。

スポンサー契約を解除しようとした会社重役を有名登山家が殺害する「未完の頂上」と、悪徳ブリーザーを他の女性が殺害したように工作するペットショップの女性経営者の「幸福の代償」という2つの中編が収録されていて、山岳モノや動物モノという作者の得意とする分野を事件背景に持ってきている点が目を引きます。また、別シリーズのキャラクターである警視庁動植物係・須藤警部補が特別出演しているのもファンにとっては嬉しい趣向です。
いずれも安定した出来栄えで一定のクオリティは維持していて、小さな矛盾点から犯人を追いつめていく過程はスリリングで面白いです。ただ、両作品とも最終的に犯人を落とす決め手に意外性がないかなと思います。(毎回、同じような感想を書いている気がしますが)。
次作は動物オタクの薄巡査と、犬恐怖症の福家警部補の共演を期待したいw

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