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ミステリの祭典

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薔薇忌

作家 皆川博子
出版日1990年05月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 虫暮部
(2023/12/29 15:24登録)
 舞台芸能短編集だけど、泡坂妻夫の職人ものみたい。あっちで耐性が付いていたからスンナリ読めたってとこがあるかも。具体的なイメージは出来ずともなんとなく情景が伝わるいにしえの語彙。カードの家を作るように丁寧に積み上げられる台詞と男女の機微。
 結構強烈な筈の各編結末のサプライズが意外にサラッと流れたのは、日常と幻想を抱き合わせる筆致のなす業か。因みに作者の性別に起因すると思われるような違いは私は感じなかった。

No.2 6点 ALFA
(2022/03/10 08:40登録)
舞踏、歌舞伎、大衆演劇など舞台芸術、芸能を設定とした七編からなる幻想短編集。
どれも魅力的なモチーフ、道具立てなのだが、「死」がいささか濫用されている。
死は言うまでもなく人生の最大事で、これを持ち出せば話はドラマチックになるのだが、安易に用いると幻想小説といえどもプロットが歪みかねない。

お気に入りは「化粧坂」。大衆演劇の猥雑さと少年の潔癖さがコントラストをなして面白い。ここでの「死」は自然。

No.1 6点 ∠渉
(2014/12/19 16:51登録)
実家の本棚にあった掘り出し物。
ミステリ的な要素も含んでいるけれど、基本的には幻想小説。シチュエーションが全て(伝統)芸能の世界(歌舞伎、能、舞台、演劇)というくくりなので、かなりよく纏まっている。舞台に潜んでいる生と死の倒錯感を幻想的に表現した7本の短編。全編ラストに魅惑的などんでん返しがあるのもミステリ的。個人的には性的倒錯に満ちた「化粧坂」とドラマティックな「化鳥」がお気に入りだが表題の「薔薇忌」やセクシャルスリラの「紅地獄」や溢れる狂気「桔梗合戦」も捨てがたい。ホラー作品って、下品なゾクゾク感が結構あると思うんだけど、まぁ、それもすごく好きなんだけど、これはちょっと違ったなぁ。死の匂いたちこめるゾクゾク感が、なかなかどうして美しいんだよなぁ。これが演劇縛りの意図なのか。
とにかく、粒ぞろいの和製スリラ集である。掘り当てて良かった。

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