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ミステリの祭典

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明日訪ねてくるがいい
弁護士トム・アラゴン

作家 マーガレット・ミラー
出版日1978年02月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 人並由真
(2024/04/17 12:23登録)
(ネタバレなし~たぶん・汗)
 南米の一角、サンタ・フェリーシアの町にあるデイヴ・スメドラーの弁護士事務所。そこに所属する25歳の新人弁護士トム・アラゴンは、卒中で半身不随の男性マーコーを夫に持つ50歳の女性ギリー・デッカーから依頼を受ける。その依頼内容は、8年前に当時15歳のメキシコ人の少女トゥーラ・ロペスと駆け落ちした、今は54歳になる前夫B・J(バイロン・ジェイムズ)・ロックウッドを、訳あって捜してほしいというものだ。ギリーはそれなりに資産を持つらしい。アラゴンは依頼人の情報をもとに、ロックウッドの手掛かりがあるらしい、はるか彼方の辺鄙な村バイア・デ・パレアナに向かうが。

 1976年のアメリカ作品。ミラー後期のシリーズもの、若手弁護士トム・アラゴンものの第一弾。
 創元から出たこのあとのシリーズ二冊分が割とそばに積読であるが、どうせならシリーズ一冊目からと本書を図書館から借りてきた(実は同じポケミスは大昔に購入したと思うが、例によって、蔵書の中からすぐに見つからない・汗)。

 本文200ページちょっとと薄目だし、後期のミラーの文章は歯応えを感じる一方、贅肉がなくて読みやすいのでサクサク、ページをめくれる。名前がある登場人物も、モブキャラを含めて30人前後と程よい感じ。

 しかし終盤まで物語の底が見えず、一方で事件またはそれらしいものは続発。一体これはどういう話なのかと思っていたら、最後でとんでもないサプライズが待つ。

 とはいえ<これ>はアンフェアではないかとも思いもしたが、考えると80年代後半~21世紀の我が国の新本格ならありそうな感じの大技で、そう思いを馳せると、首肯できなくもない。
(一方で、きちんと伏線を張ってあるところは、張ってある。)
 で、いったんそう肯定して何か所かページをめくり直すと、その引っかかったポイントの部分に、物語や登場人物の奥に潜むかなり昏いものが改めてまた浮かび上がって、読み手に深い実感を求めて来る。
 うん、これこそミラー作品。作者の狙いは、たぶんしっかりと堪能した。
 
 できるならミラーの初期~前期までの作品を何冊か読んで、作者の作風になじんでから手に取って欲しい一冊。
 評点は8点に近いこの数字で。

No.2 7点
(2018/05/28 08:48登録)
 所属する法律事務所の上得意である老婦人から、失踪した前夫探しを頼まれた新米弁護士トム・アラゴン。単身メキシコに渡り、事業に失敗して逮捕されたB・Jなる人物の足取りを洗っていくが・・・
 たいして長くもない話の半分はのんびりとした追跡調査。しかし多少なりとも彼の行方を知るであろう人物に行き当たったが最後殺人、殺人、また殺人。
残10ページ余りでも殺人ですが、主人公アラゴンは軽口は叩くものの瓶底眼鏡のペーペーでただ状況に振り回されるばかり。碌でもない話の一服の清涼剤として配置されてるだけで全くアテになりません。
(ボーイスカウトだの鈍重な青年だのと言われております。まあ25歳ですから無理もありませんが)
 どう決着を付けるんだと思ってましたらそう来ましたか。
でもアレですね、それだけじゃないですよ。これは怖い話です。20章の後に21章のアレが来ますからね。で、22章のあの結末。
 20章のエピソードはこの作品の山場ですが、あれがなかったらひょっとすると最後の殺人は起きなかったかもしれません。アラゴンの調査はその前に終わってる筈でしたからね。そう考えると益々怖い。
「まるで天使のような」「これよりさき怪物領域」と来て、次がこれというのも各作品のプロットを追っていくとアレですね。「なんぼ逃げよとしても絶対逃がさへんでえ」という、非常にアレなイヤ成分が感じられます。
たぶんこの作品はミラーによる夫マクドナルドの最高作「さむけ」の変奏版でしょう。
 それが夫婦の実体験に裏付けられてるというのがねえ・・・マーガレット・ミラーは自分自身を生きたまま解剖できる作家なんですねえ・・・怖い人です。

 追記:サイトが検索に引っ掛かったので興味のある方はアクセスどうぞ
ラノベ作家の秋田禎信さんがマーガレット・ミラー作品の愛読者だそうで(「魔術士オーフェンシリーズ」等の作者)
禎信ファンの方によるミラー作品の概要が挙げられております。
「秋田禎信ファンによるマーガレット・ミラー作品紹介」
https://togetter.com/li/907981

No.1 5点 蟷螂の斧
(2014/08/28 21:18登録)
弁護士トム・アラゴンシリーズの第1作目。裏表紙の要約~『前夫B・Jを探してほしい、老婦人ギリーの依頼を受けた弁護士トムは、カリフォルニア半島の海辺の小村にたどりついた。B・Jは8年前、当時妻だったギリーとの生活を捨て、この村に新天地を求めてメキシコ娘と駆け落ちしたのだ。だが開発事業に手を出したB・Jは、不動産詐欺で投獄されたという。事業の片棒を担いだハリーというやくざ者の情報に望みを託した。だが何者かに薬を盛られたハリーは、介抱するトムを振り切り、狂ったように干上がった河に飛び込んで無残な墜死を遂げたのだ。次々に殺されるB・Jの過去の関係者たち。老婦人の一徹な願いが招いた戦慄の連続殺人とその意外な真相は?』~                                                       皮肉な会話のあるハードボイルドタッチの小説です。著者の得意な心理描写は影をひそめ、淡々とした調査状況が語られます。緊迫感がないのでやや辛い感じがします。エンディングの衝撃度は、他の作品ほどではなかったのが残念です。

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