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ミステリの祭典

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痛み かたみ 妬み

作家 小泉喜美子
出版日1980年06月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 6点 斎藤警部
(2020/04/27 18:55登録)
痛み La Peine/かたみ Le Mémento/妬み La Jalousie/セラフィーヌの場合は/切り裂きジャックがやって来る/影とのあいびき (オリジナル短篇集6篇)
またたかない星/兄は復讐する/オレンジ色のアリバイ/ヘア・スタイル殺人事件 (中公文庫増補4篇)

ミステリ、パラミステリ、ファンタジー、サスペンス、奇妙な味、、水増し推理クイズさえ快い。 おっとガチの推理クイズもあった! お洒落で魅力のストーリー展開なんだけど、着地点の地盤がちょっと柔らかい、でもそこがいい、みたいな作が目立つ。 意外性より形式美で勝負の作も際立つ。 読者を、カットバックの手際が予想外の方向へ振り回したり、じんわりするエンディングが暫し包み込んだり。。 本格味のある某作、アレの正体については伏線もしっかりあったんだな。。 増補4篇の内、2篇は露骨にオマケだが、ブラウン神父的味わい深い逆説ものもあったりする。

No.2 3点 まさむね
(2017/11/09 22:45登録)
 中公文庫版で読了。1980年、双葉社刊行の短編集に、4短編を増補して再編集したものだそうです。
 表題となっている3作品も含めて、正直、結末が容易に想像できたり、「それで?」と問いかけたくなるような作品が多かったですね。うーん、「入手困難・幻の短篇集の増補復刊」という謳い文句に惑わされちまったなぁ…って感じ。
 ちなみに、増補した4短編のうち3作品は少女向け月刊誌に掲載されたものらしく、相当なイマイチ感が漂っています。最終話の「ヘア・スタイル殺人事件」などは、イマイチどころか、これってどうなの?というレベル。読者挑戦モノというか、クイズスタイルなのだけれども、ちょっと痛すぎたかな。

No.1 6点 kanamori
(2014/07/24 19:02登録)
ミステリ系の作品6編からなる初期の作品集。
前半の「痛み」「かたみ」「妬み」の3編は、連作ではないものの、女性主人公のモノローグ・回想によって徐々に物語の骨格や背景が浮かび上がってくるという構成が共通している。
感化院で重傷を負った不良少女が病院で回想する「痛み」は、オルガンが出てきたところで着地点が見えてしまった。
「かたみ」は、ホテルの一室で死体で見つかった社長夫人が、神風特攻隊で戦死した初恋の人物を回想する話。生前彼女が最後に逢った謎の人物の正体は意外というより皮肉に満ちている。
「妬み」は、女流作家が幼少期からのライヴァルである女性舞踊家を心理的に突き落す話。女性主人公がどこか作者自身を思わせる造形なだけにかなりブラックな味わい。
後半の3編のなかでは「切り裂きジャックがやって来る」が出色の出来で、軽妙な語りとラストのどんでん返しの落差で読ませる。これが編中の個人的ベスト。
残り2作品は、作者お得意の歌舞伎を題材に外国人が絡む”事件”ですが、ミステリ的にはともにイマイチな内容だった。

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