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ミステリの祭典

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COVERED M博士の島
改題『M博士の比類なき実験』

作家 森晶麿
出版日2014年04月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 虫暮部
(2025/05/23 14:51登録)
 改題版で再読。旧版でおかしいなと思った部分が修正されていた。やれば出来るじゃん。
 結構強引な美の理論(人の審美眼の単純さを前提にしているような)に読者を巻き込み、外見も内面もそこまでいじれるなら何でもアリになりかねない境界線上で戯れつつ、ギリギリ箍を外さずにミステリに踏み止まったスリリングな実験は、それなりに成功した模様である。

No.2 6点 名探偵ジャパン
(2019/05/16 21:49登録)
『M博士の比類なき実験』と改題された文庫版で読了しました。
「孤島もの」で「首なし死体もの」ですが、本作の一種独特な世界設定は、ちょっと他に例がないと思います。
首切りトリックも、普通であれば何てことのないトリックなのですが、作品の持つ異様な雰囲気に翻弄されて、「ああ、そうね」と、一周回って虚を突かれた感じで楽しめました。
最後はあまり好みではない「オチ」でしたが、この作品ならありでしょう。タイトルにも出てくるM博士の手術技術が、もはや超能力レベルに凄すぎるのも気になりましたが、一種の特殊設定と考えれば。

No.1 6点 メルカトル
(2014/10/08 22:29登録)
どことなくよそよそしい文章が好みではないが、孤島物としてはまずまず合格点ではないかと思う。構造は本格ミステリだが、サスペンスの要素も多分に含まれている。その割には緊迫感が感じられず、考えてみればかなりの苦境に立たされているにもかかわらず、意外と平常心を保っている登場人物たちが異様に思える。
通常のミステリであれば、首なし死体や生首が現れたのだから、推理合戦とまではいかなくても、犯人は誰かとか、動機は何なのかなどの論戦が繰り広げられるものだと思うが、本作においては一向にその気配もなく、議論は明後日のほうに終始しているのが訝しい。それもそのはず、この作品の白眉は、実は孤島を脱出してからなのだから。
正直、島での殺人事件が起こるまでは勿論、それ以降もなんとなく展開がもたついてスッキリしない気分だが、終盤に来てようやく本来のキレを取り戻している感がある。そこにいたって初めて本書の良さが理解できるだろう。まあ、はっきり言ってお薦めとは言えないが、孤島物が好きな人は一応読む価値はあるかもしれないね。

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