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ミステリの祭典

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僕の光輝く世界

作家 山本弘
出版日2014年04月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 6点 メルカトル
(2018/06/10 22:35登録)
SF作家山本弘がミステリを書いたら、こんなの出来ましたって感じでしょうか。
アントン症候群、視覚を失った障碍者がそれ以外の感覚で視覚を補って、脳内で再生しまるで現実を見ているような錯覚を起こさせるという、まことに奇妙な症例を主人公に背負わせる、一筋縄ではいかない設定が異色な作品です。
現実と主人公が視ている映像との乖離が、これまで体験したことのない世界を読者に突き付けます。そのことがミステリと有機的に繋がっているかどうかは疑問ですが、所々でこの設定が生きてくるのは間違いないと思います。

また、恋愛小説としては決して甘ったるくなく、光輝と夕の関係はある時は打算的であり、どちらかと言えば光輝が「視ている」夕に片思いの傾向が見られます。光輝にとっては理想の恋人でも夕にとっては好奇心を刺激される対象と映っているように思われます。夕が付き合ううちに光輝に惹かれていくわけでもなく、その辺りの少女の揺れ動く心は描き切れていないと感じました。

日常の謎から殺人事件まで、様々なトリックを駆使しての作者の苦心が目に浮かぶようで、さすがに本格ミステリは荷が重いのかと思いましたが、中編の最終話はなかなかの出来栄えでした。しかしやや残念なのは、作中の『七地蔵島殺人事件』の魅力がダイレクトに伝わってこなかったことでしょうか。急ぎ足過ぎて煩雑になりすぎな感が否めませんでした。
ラストの対決と後味は非常に良かったですね。また全体として、アントン症候群が多幸感をもたらすことにより、悲壮感や重苦しさがなく読者にとっては救われる部分が多かったと思います。

No.2 6点 abc1
(2015/02/11 02:43登録)
なかなか楽しめました。
これを書くのにはそうとう繊細な心遣いが必要だったでしょう。
障碍を持つ人間の方が(健常者よりも)真実を見ていることもあり、
そういう点でも気を遣って書かれていると思いました。
ただ、どうしても気になる点が一つ。
最終話の犯人が犯した致命的なミス、アホすぎます。
女装して監視カメラに映り、犯人を偽装するために乗ってるエレベーターに、
目の見えない人が乗ってきたら、ただ黙っていればいい。
その人に女性だと思われる必要はない。
なのに犯人は女性の声を真似て、アニメの主題歌を歌ってしまう。
相手がアニメオタクだと知っているのに。
そのアニメの原作者は父親なのに!

No.1 8点 虫暮部
(2014/06/06 20:29登録)
SF作家の山本弘らしい連作ミステリ。といってもSFやファンタジーが混ざっているわけではない。広範な知識の生かし方とか、ミステリとしての枠組の作り方とか。語り手の特殊な視点によって初めて謎が成立する話などは、“ミステリとはなにか”をミステリの外側から(少々意地悪く?)考えたような印象。
 親切なあのおねえさんがチョイ役で登場するのは嬉しかった。
 ひとつ大いに納得出来ない点。姿が見えない・声を出さない、という条件であっても体臭や化粧の匂いでひとの存在はそれなりに判るだろ。

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