罪深き村の犯罪 |
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作家 | ロジェ・ラブリュス |
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出版日 | 1991年08月 |
平均点 | 6.67点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 7点 | tider-tiger | |
(2023/06/22 12:05登録) ~故郷の静かな村で有力者が絞殺されたと聞き知った。とっくの昔に村を出て保険調査官をしていた私は探偵役を買って出た。相も変らぬ人間模様にゲンナリもさせられるが、警官としては凡庸だが人間的には嫌いになれない警視との二人三脚の捜査が開始される。 彼ら、彼らと私、そして、私……。 1984年フランス。パリ警視庁賞受賞作。閉鎖的な村社会のありようを描くことに力を入れた作品なのかなと思わせておいて、それだけには納まらない。なかなか巧妙な作品に仕上がっている。 個人的なお気に入り作品。邦訳は本作のみのようで、実に惜しい。 本作は閉鎖的な村社会での事件を扱ったよくある作品を一歩越えていると考える。小さな共同体内部の事件であることは必然でありながらも、そのこと自体が×××になっている。さまざまな要素が詰め込まれて消化しきれなかった部分あるが、読みどころは多い。 言葉へのこだわり、洞察が「もちろんです」を連発する有能なのか凡庸なのかよくわからない警視という面白いキャラを生み出したように感じる。 深い考えもなくなんとなく警察に入ってしまったが、自分にはその資質がないと吐露する警視に『私』は言う。 「どんな職業にも<技術>が必要だということに気づいた?」 「そのとおりです」 「しかし、その<技術>には反発した。心のどこかで、警察官になるための技術を軽蔑しているからです」 ミステリ的に分類すればアレになるのだろうが、熟達のミステリマニアでも虚を突かれるのではなかろうか。テーマ的にも犯人像にしてもとある作家のとある作品が思い浮かぶが、その作品よりも出来がいい。 邦題の『罪深き村の犯罪』というのは曖昧な日本語であまりよろしくないと思っていた。「罪深い村で起きた犯罪」なのか、「村で起きた罪深い犯罪」なのかが判然としない。はてさて……と思ったのだが、なるほど。 |
No.2 | 7点 | nukkam | |
(2014/08/13 08:41登録) (ネタバレなしです) フランスのロジェ・ラブリュスが1984年に発表したミステリー第1作の本書は意外な掘り出し物の犯人当て本格派推理小説でした。登場人物はそれなりに個性的ですがもっと深彫りした描写であればと思わなくもないし、謎解き伏線も色々と張ってあるものの決め手としての説得力はやや弱いように感じられます。でも真相は結構印象的ですし、本当に理解しているのか怪しいくせにやたらと連発される「もちろんです」が醸し出すユーモアがいいアクセントになっています。最近のミステリーでは珍しくなった、犯人に罠を仕掛けておびき出す場面の緊張感もなかなかで、読ませどころたっぷりです。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2014/05/09 18:25登録) ここ数十年、犯罪とは縁がなかった平和な村で、突如として村の有力者が絞殺死体で発見される。マルセイユで事件の新聞記事を読んだ保険調査員の「私」は、その生まれ故郷である閉鎖的な小村に帰り、フレシュ警視の捜査に協力するが-------。 ”探偵の帰郷”もののヴィレッジ・ミステリ。 主人公ロジェの里帰りを待っていたのは、さらに日曜日ごとに発生する連続殺人。農場経営者に対する労働争議や、狩猟協会のいざこざ、男好きのする女性を巡る愛憎関係など、動機を持つ容疑者にはことかかないが決め手に欠ける状況の中、最後に明らかになる犯人像にはちょっと驚かされる。犯人の行動原理が特殊で意外性がある。 しかも読み返してみると、本筋と関係なさそうなところに堂々と手掛かりが提示されているのでヤラレタ感が強い。 フランス・ミステリといえば、登場人物の心情をねちっこく繊細に描写するイメージがあるが、本書に登場する村人たちは個性的に描きながらも、過度に濃くないので、フランスものが苦手な人も抵抗なく読める謎解きミステリになっていると思う。 ただ、主人公の”青春の終わり”を告げるエピローグが、それほど胸に迫ってくる書き方ではなかったのが、やや残念に思った。 |