殺意の構図 探偵の依頼人 榊原聡 |
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作家 | 深木章子 |
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出版日 | 2013年12月 |
平均点 | 6.80点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 7点 | 虫暮部 | |
(2021/04/03 13:05登録) 最後に出て来る“現場にあるべき物が無い”のロジックは浮いている気がする。探偵の推理の為には犯人のこういう行動が必要、と逆算して付け加えたような。そして、榊原の意図した落としどころは少々不安定では(しかしダディよく我慢した)。 元弁護士の経歴のおかげで法律関係について安心して読めるのはこの作者の強みだな~。 |
No.4 | 7点 | tider-tiger | |
(2019/01/14 22:10登録) ~峰岸諒一は義父宅に火を放ち、義父を殺害した容疑で拘留されている。一貫して無罪を主張するも、その証言にはいまいち信憑性がない。弁護を引き受けた衣田征夫は困り果てていたのだが、とある事件が勃発したことにより、峰岸は曖昧な態度から一転して決定的な証言を行うのだった。 法律知識を活かした企み、絡み合う人間関係、二転三転して読者を振り回す展開と夢中になって読める。タイトルの通り、殺意の芽生え、事件全体の構図を読み解くことが主眼となっている。 人物の描き方はやはり類型的で、なおかつ作者は作中人物をかなり突き離して見ているように感じる。 個々の事件、トリックなどにけっこう無理があるもそこを読ませる作品ではない。ただ、さすがにエレベーターの件はちょっとどうなのかと思った。 物語の構図を崩す懼れのある瑕疵としては、借金の話。あれがあそこまで泥沼になってしまうものなのか、ちと疑問。ここが崩れると作者の狙いが根底から崩れるのでこれはまずいと思った。 一作目、二作目と同様に本作も面白い。リーダビリティ高く、意外性もあって、ミステリとしてはけっして悪くない。 だが、小説としてなにか一味足りないように思えてならない。そのせいでラストのあの展開もいまいち胸に響いてこないような気がする。 構図はもちろん重要だが、個々の部品、場面を読ませることも大切だと思う。 まだ榊原シリーズしか読んでいないので、それ以外の作品(本サイトで好評の猫には推理が~あたりかな)を読んでからこの点についてもう一度考えてみたい。 |
No.3 | 7点 | パンやん | |
(2017/04/29 10:35登録) 放火の冤罪事件を巡って話が二転三転するも、すこぶる面白く、まさかまさかのエンディングに驚きのエピローグ。視点の変化による事件の立体化、見え隠れする毒殺犯の正体など、実に緻密でブラックながら、優しい視線も感じられて嬉しいのです。 |
No.2 | 7点 | 初老人 | |
(2016/05/16 12:44登録) 全体的に見て説明口調が若干くどい様に感じた。その事が物語の勢いを殺いでいる様にも思った。 そこを除けば細部に亘る作り込みの精緻さが目を惹き、デビュー作同様、実に達者で練られた作品であると感じた。最後のオチは蛇足のような気もするが、榊原の人間性がエピローグの中に集約されてもいるようで、個人的には興味深いものがあった。 |
No.1 | 6点 | アイス・コーヒー | |
(2014/06/14 17:52登録) 自分の義理の父親・峰岸厳雄宅に放火し、彼を殺害したとして逮捕された峰岸諒一。現場のあらゆる証拠が彼を指し示す中で、弁護士の依田は慣れない刑事裁判での弁護を依頼されるが…。 元弁護士の作者が、「峰岸家」を巡る一連の殺人事件を描く。複雑に交錯した殺意が分解され、ことの真相が明かされる様はまさに圧巻。大がかりなトリックや奇抜な設定はないものの、全体の完成度は高かった。 特に、各章での演出や伏線、ロジックによる犯人の特定などは見事。本格要素を前面に押し出しつつ、特異な真相を描き出す手法は鮮やかだった。さすが、裁判の展開もよく出来ている。 難点は、やはりこれといった特徴に欠けること。もう一息、何かインパクトが欲しいところだ。ストーリーも、もう少し工夫して欲しい。 |