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ミステリの祭典

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作家 曽根圭介
出版日2007年11月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 パメル
(2024/04/18 19:32登録)
日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した「鼻」を含め3編全てに、差別や不平等などの描写がある短編集。
「暴落」人間の価値が株価として設定されている世界で、就職や結婚、交友関係、家族関係などで自分の株価が上下する。一流銀行に勤める主人公は、あることをきっかけに株価が下がり、上げようと画策するが。銀行員が「イン・タム」になるまでの身の上が語られるが、この名前の秘密が突拍子もなく想像を超えていた。
「受難」「俺」は気付くと、見知らぬ場所に手錠で繋がれていた。そこへ若い女が現れるが、助けることはせず謎の手紙を残し帰っててしまう。限界状況に現れた救世主となり得る人間が、話の通じない相手であるという恐怖。ただただ不条理な絶望感が味わえる。
「鼻」人間たちは鼻を持つ「テング」と、鼻のない「ブタ」に外見で二分され、テングはブタから迫害され、殺され続けていた。テング側に立ち救う側の医者と連続幼女誘拐事件を捜査する警察官の視点が入れ替わり描かれるが、ところどころ違和感が。二人が交わった時に明らかになる真実に驚かされた。異様な世界が見えるような気持ち悪さが味わえる。

No.1 7点 メルカトル
(2013/11/16 23:20登録)
第14回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作『鼻』他、『暴落』『受難』を収録した短編集。
それぞれ違ったタイプの不条理劇とでもいうべき佳作が揃っている。ホラー小説とは言ってもさほど怖くはなく、むしろブラックユーモア的な独自の世界観を醸し出している辺りは、新人らしからぬ筆力の持ち主だと感じる。
個人的に最も気に入っているのは『暴落』でラストの衝撃はもうね、これ程意表を突いた結末はなかろうというくらい、まさかの展開が待っている。『鼻』も途中サスペンスを交えながら、これまたオチが見事に決まっている。
『受難』はこれぞ不条理の世界って感じで、なぜだか分からないが身動きが取れなくなった主人公の前に3人のタイプの異なるちょっといかれた人々が現れては去っていくという、何とももどかしいホラーである。何故誰も助けてくれないのか、その辺り不条理さ全開で、奇妙な味わいを醸し出している。
どれもかなり面白く、レベルの高い作品ばかりで、とても印象深い一冊である。

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