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ミステリの祭典

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残り全部バケーション

作家 伊坂幸太郎
出版日2008年03月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 E-BANKER
(2016/06/19 18:03登録)
2008年以降、段階的に発表されてきた物語に書き下ろしを加えて発表された作品。
溝口と岡田という魅力的な“裏稼業コンビ”が大活躍(?)する連作短篇集。

①「残り全部バケーション」=離婚が決定した夫婦と娘の元にもたらされた一通のメール。それが風変わりなドライブの始まりだった・・・ということで、すでに読者は伊坂ワールドへ誘われることになる。
②「タキオン作戦」=二番目にして連作中最も重要(かもしれない)エピソードが描かれる本編。父親に虐待されている少年を助けるために岡田の取った行動と、それに纏わる溝口やら他の面々のエトセトラ、etc・・・。タイムマシーンの話題も登場して何となくSFっぽい作りにはなっている。
③「検問」=冒頭からまずは「おやぁ?」という疑問が浮かぶ展開。溝口のパートナーが岡田から謎の男“太田”にチェンジされている! でもそこのところの説明は一切なく、物語は進んでいく。警官が検問で見逃した理由は結局なんだったの?
④「小さな兵隊」=一転して岡田の少年時代が描かれる本編。岡田の友人である「ボク」視点で物語は進行していくのだが、岡田よりもボクの周辺の人物の方が面白いのはどうか?
⑤「飛べても8分」=単行本化に当たって書き下ろされた一編。ということは、連作のオチがつけられるのだろうと思いながら読み進めていくわけなのだが・・・。溝口の“謀ごと”はかなり大雑把だし、ラストも唐突に終了。

以上5編。
相変わらずの“伊坂ワールド”で、安定感抜群という感じだ。
溝口&岡田のキャラもなかなか良い。

本作はちょっと不満かな・・・
もちろん旨いのだが、ちょっと小手先が目立つというか、締め切りに追われて脱稿しました感が強い。
悪く言えば、これまで出てきたキャラクターを焼き直して、プロットを若干いじって登場させました・・・とも思えるし、「ラッシュライフ」やら「グラスホッパー」やら「陽気なギャング・・・」なんかのエッセンスを混ぜましたという印象が拭えないのだ。
(あくまでも印象ですが・・・)

確かに軽~い読書には適しているかもしれないが、あまり期待すると裏切られるよ。
でもまぁ繰り返し書くけど、この人天才だと思う。

No.1 5点 まさむね
(2013/06/07 22:37登録)
 作者お得意の“いい人系アウトロー”達が活躍する連作短編。
 登場人物がなかなか魅力的ですし,リーダビリティも高いのですが,あまり記憶には留まりそうにないなぁ…。もう一味欲しかった気がします。ちょっと先が読めてしまう面もありましたしねぇ。
 とはいえ,サクサクした読書にはピッタリで,楽しめるとは思います。

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