奇術探偵 曾我佳城全集 秘の巻 曾我佳城シリーズ |
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作家 | 泡坂妻夫 |
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出版日 | 2003年06月 |
平均点 | 6.33点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 6点 | メルカトル | |
(2020/06/19 22:14登録) 曾我佳城。若くして引退した美貌の奇術師。華麗なる舞台は今も奇術ファンの語り草である。もう一つの貌は名探偵。弾丸受止め術が自慢の奇術師がパートナーを撃ち殺してしまった。舞台に注目する観客の前で弾や銃を掏り替えた者は誰か。佳城は真相を見抜けるか?―など究極の奇術トリック満載の「秘の巻」。 『BOOK』データベースより。 単行本の方では絶賛されていますが、それ程とは思いませんでした。確かに、マジックとミステリを上手く融合させている手腕は素晴らしいです。しかし、途中でちょっと飽きてきます。何故ですかね。事件そのものの魅力がいまひとつだからでしょうか。それに、あまり余韻が残りません、いきなり解決編が始まり、それで終了みたいな感じで。尻切れトンボとまでは言いませんが、真相の意外性を感じるまでもなく唐突に切り捨てられたような感覚を覚えます。 『ジグザグ』辺りは個人的に好みではありました。途中で裏が読めてしまいますが。あとは『剣の舞』とか。動機が良かったですね、そこまでするのは逆恨みじゃないかとも思いますけど。 読んでいて何度も思ったのは、例えば山田風太郎だったらもう少し被害者の悲哀や、ストーリー性、ミステリ的趣向を充実させていたのではないだろうかというものでした。本書の場合はあまりに奇術に傾き過ぎたせいで、他がおろそかになってしまっているのではないかと思いましたね。 |
No.2 | 6点 | ボナンザ | |
(2017/06/14 22:07登録) 泡坂の代表的なシリーズの一つ。長期連載だけあって多様な作品が収録されているが、どれも一定水準以上なのは流石の一言。 |
No.1 | 7点 | E-BANKER | |
(2013/05/10 23:32登録) 1980年の初出以降、20年にも渡って「小説現代」誌に随時発表されたのが「奇術探偵曾我佳城シリーズ」。 それをまとめたのが「奇術探偵曾我佳城全集」。 本サイトでは「全集」としてアップされているが、文庫版を愛読する読者としては、講談社文庫として分冊された「秘の巻」「戯の巻」の順に書評していきたいのでご容赦願います(分量も多いので、分けた方がいいように思えるし・・・)。 ①「空中朝顔」=シリーズ初編は、まるで一枚の絵画を想像させるような芸術的作品。空中で咲いた朝顔を見つめる曾我佳城の姿というだけでシリーズファンには堪らないのではないか。 ミステリー的には?だが・・・ ②「花火と銃声」=これは実にミステリーっぽい趣向溢れる作品。特に「銃痕」の取り扱いは「さすが」と思わせるし、伏線の張り方はやはり職人芸だろう。 ③「消える銃弾」=舞台上の人間に向かって撃った銃弾が見事に消える(!)・・・はずが、消えずに発生した殺人事件の謎。ミステリーとしての仕掛け自体はやや拍子抜けだけど。 ④「バースデイロープ」=ロープを使ったマジックは高等技術が必要(by曾我佳城)とのことだが・・・。結び目にこんなに種類があるのは初めて知った! ⑤「ジグザグ」=テレビではよく見るマジック・・・三つに分かれた箱に人が入り、胴体部分を横にズラす奴(伝わってるかな?)。もちろんタネも仕掛けもあるマジックなのだが、本当に胴体部分だけが抜かれた死体が発見されるのが本編の事件。でもこの程度の動機でここまでやるかなぁという疑問は残る。 ⑥「カップと玉」=「カップの玉」のマジックに絡め、徹底的に暗号に拘った作品。暗号そのものはポーやホームズの時代からある古いタイプのものだが、こういう手の作品は個人的に大好き。 ⑦「ビルチューブ」=事件の真の構図をうまく隠したまま、ラストに伏線を全て回収して収束という実に短編らしい好編。作中に出てくる紙幣の焼失と出現のマジックは不思議だ。 ⑧「七羽の銀鳩」=マジックで使うはずの銀鳩が別の鳩にそっくり入れ替わる・・・という風変わりな謎を扱う本編。事件の舞台をよく読めば、作者の狙いはすぐに読めるかも。 ⑨「剣の舞」=プロットとしては④と同趣向。別視点として書かれている登場人物がどのように事件の本筋に関わってくるか・・・ということなのだが。ミステリー的にはあまり成功してないように思える。 ⑩「虚像実像」=映像技術を使った大掛かりなマジックを演じる男がショーの途中に舞台で殺害される・・・。マジックのカラクリそのものが面白い。 ⑪「真珠婦人」=昔、こんなタイトルの昼メロがはやりましたなぁ・・・(原作は大作家ですが)。作中の「パン時計」のタネってどうなってるのか? 以上11編。 さすがの一言。奇術とミステリーの融合なんて、国内では作者の右に出る者はいないでしょう。 本作は主人公・曾我佳城の魅力も相まって、実に楽しい読書ができる。 ミステリーとしての観点からでは、各作品にレベル差はあるのだが、紙上で奇術を味わうだけでもよしとしよう。 下巻である「戯の巻」へつづく・・・ (好みは②や⑦辺りかな。暗号ものの⑥も好きだ) |