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ミステリの祭典

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黄金の蜘蛛
ネロ・ウルフ

作家 レックス・スタウト
出版日1955年06月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2021/10/18 15:08登録)
(ネタバレなし)
 その年の5月。「私」ことアーチー・グッドウィンは、ネロ・ウルフの事務所に変わった客を迎える。その客は近所の12歳の少年ピーター(ピート)・ドロサスで、彼は路上で信号待ち中の乗用車の窓を拭き、チップをもらうのが日課だったが、ある車中でひとりの女性が助けを求めている挙動を窓越しに見かけたという。その女の特徴は頬の傷と、純金らしい蜘蛛型のイヤリング。警察が嫌いなので有名な探偵ウルフの事務所に来たというピーターは、該当車のナンバーを伝えて帰る。だがそれから間もなくして当のピーターが車に轢かれて重傷の末に絶命。しかもその車はくだんのナンバーの車らしく、さらにその車がまた別の人物を轢き殺していたらしい情報が入ってくる。ウルフ一家は新聞に広告を出し、その謎の女との接見を図るが、やがて一人の女性が事務所に現れた。

 1953年のアメリカ作品。ネロ・ウルフシリーズの第16長編。

 メイスンシリーズを思わせる奇妙な謎の提示と、少し前に出会ったばかりの少年の轢殺という相応にショッキングな序盤から始まり、キーパーソン? の女性が登場。かなりハイテンポな展開でストーリーが進み、リーダビリティは申し分はない。同一の車による謎の轢殺という事態に対してウルフが、意志を持った殺人カーでもあるまい、という主旨のことを言いながら事件を探るのは、ちょっとキングの『クリスティーン』を思わせたりした。

 今回はファンにはおなじみのウルフの外注チームの面々が大活躍。一方でアーチーも関係者の間でけっこう際どい作戦を仕掛けて回り、かなりB級ハードボイルドミステリっぽい(あまりこういう言い方は好きじゃないが)。
 印象的だったのは妙齢のゲストヒロインは何人か登場するが、アーチーがその誰ともお近づきにならないことで。今回はシリーズのチェンジアップ的な雰囲気も狙っているのか。まあ通常編でもアーチーはモテるけど、別にプレイボーイ青年というわけでもないが。
(まったく事件に関係ない部分で『シーザーの埋葬』以来のガールフレンド、リリー・ローワンの名前が、また一瞬出てくる。)

 終盤の犯人を暴くシーンはウルフの説明にちょっと力技を感じたし、読者の推理の余地もあまりない方だと思うので、フーダニットパズラーとしての興味は薄い方だと思う(ただし事件が形成された経緯は、なかなか)。
 なんにせよ普通に面白くは読めたのは、シリーズが完全に軌道に乗ってこなれたということも大きいと思う。佳作。

No.1 6点 nukkam
(2015/08/14 10:36登録)
(ネタバレなしです)  1953年発表のネロ・ウルフシリーズ第16作です。日本で初めて翻訳紹介されたスタウト作品らしく、ハヤカワポケットブック版は半世紀以上前の古い翻訳で誤字脱字もいくつか見られますが、その割には意外と読みやすい作品でした。サスペンス豊かな序盤、手掛かりを求めての駆け引きにも似た容疑者調査が面白い中盤と読み応え十分です。後半のアクションシーンはハードボイルドが苦手な私はそれほど楽しめませんでしたが相手がならず者系なのでまあ許容範囲です(笑)。最後はご都合主義的な証人が登場して解決しますが、その前に犯人に結びつく手掛かりと推理をウルフがちゃんと説明していますので本格派推理小説として合格点を付けられます。

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