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ミステリの祭典

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メグレとワイン商
メグレ警視

作家 ジョルジュ・シムノン
出版日1984年04月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 5点 クリスティ再読
(2022/05/18 18:51登録)
おや予想とは全然違ってた。前作「録音マニア」の後半のネタをもっと整合性良く作り直したんだなあ.....作品としてはヘンテコな「録音マニア」よりも、普通に作品になっているけどもね。

評者がへそ曲がりなせいかもしれないが、意外性とか逆になくなってしまう分、作品的な魅力が薄いようにも感じる。「シムノンの思い」がストレートに出過ぎている? この被害者、シムノンの通例で、大衆向け安ワインを売る商売に成功し成り上がった男なんだけども、周囲に対する支配欲が強すぎる性格的な欠点がある。で、周囲の女性にはお約束のように手を付ける...いやいやシムノン自身の罪滅ぼしか何かなのかしらん?

だから、犯人の告白に宗教者めいた父性で耳を傾けるメグレも、シムノンの「心の中の理想像のキャラ」みたいに見えてしまって、評者はシラける部分の方が強かったなあ...ごめん本作については、評者はイイ読者じゃない。
読みどころはメグレの風邪ひき、くらい。雪さんのご教示によると、パルドン医師は前作「録音マニア」が最後の登場だそうで、本作は名前しか出ない。メグレ自身が意固地なくらいにパルドンの診察を受けるのを渋る。

変調を感じる。シムノン老いたり?

No.2 5点
(2018/11/12 14:18登録)
 ワイン販売会社の社長オスカール・シャビュが、個人秘書とラブホテルを出た所を待ち伏せにあい射殺された。オスカールは手当たり次第に身近な関係の女を漁り、借金を申し込んだ友人をあからさまに侮辱して喜ぶような男だった。唯一の肉親である父親とも疎遠で、妻との間もビジネス本位の繋がりしかないオスカール。メグレ警視は彼に恨みを持つ多くの人間を探り、直接社員たちの前で殴られ、放逐されたある男に目を付けるが・・・。
 メグレ警視シリーズ第99作。前作「メグレと録音マニア」の改訂版。被害者の好青年をイヤな奴にして犯人と二重写しにし、衝動による犯行から怨恨を動機に変え、容疑者をワイン会社関連に絞ってより関係性を深めています。
 これらは全て、ある場面を効果的に演出するためのものであり、それには成功しています。被害者は攻撃的に振舞っていますがその行動は自分の弱さを隠す為のものであり、交際相手の女たちには全てを見抜かれています。臆病な男だと。なりふり構わず頭を下げて会社を拡大させた見返りを、成功した今求めているのだと。
 冒頭で身勝手な理由から実の祖母を撲殺し、金を奪った青年の取調べシーンが描写されますが、最後にメグレと心を通わせたかに見えた気の弱い犯人の姿に、この人物が重なります。弱さの裏返しとしての攻撃性という主題はより明確になっていますが、個人的には前作の方が好みです。

No.1 6点
(2013/03/12 21:11登録)
前作『メグレと録音マニア』との共通点と相違点を意識させられる作りになった小説です。簡単な粗筋だけで人間関係等を問題にしなければ、なんだ前作とそっくりな展開ではないかとも言えるでしょう。
しかし、これはひょっとしたら前作の問題点に対する修正版ではないか、とも思えてきます。前作は前半と後半が分断されたような印象を与えたのに対し、本作は、オーソドックスなミステリ的人間関係で全体がまとめられているのです。今回は原題の意味も邦題と全く同じで、殺されるのがワイン商です。この被害者のいやな性格が事件の中心にあって、動機を持つ人間を探していく、という話になります。普通に捜査を進めていくだけでも、犯人を特定して逮捕することはできたはずの事件なのですが、あえてこのような展開にしたというのが、前作を意識していたのではないかと推測する根拠です。それだけに最後の2章はなかなか読ませてくれます。

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