閉ざされた夏 |
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作家 | 若竹七海 |
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出版日 | 1993年01月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 8点 | Tetchy | |
(2020/06/03 23:33登録) いやあ、地味な作品ながら実に読ませる。そして面白い。 物語は架空の都市新国市。そこで生れ育ち、そして夭折した架空の作家高岩青十の功績を遺すために建てられた高岩青十記念館が舞台。そこに勤める嘱託の学芸員、佐島才蔵とその妹のミステリ作家でもある楓を通じてそこで起こる殺人事件の謎を解き明かすといった内容だ。 こう書くと実にオーソドックスなのだが、実は殺人事件は物語の中でも約半分くらいのウェートしか占めない。残りの50%は才蔵たち学芸員たちの日常と、架空の作家高岩青十と、彼を取り巻く人々の隠された過去の謎だ。そしてこの残りの50%が実に面白い。 どこか浮世めいた世界で、正直私なんかはこのような施設に勤務する人たちの一日はどんな風に過ぎていくのだろうと思っていただけに本書に書かれている内容は新鮮だった。 とはいえ、正直云って彼らの平素の業務は日常の管理と印刷物の発注ぐらいで本書のメインとなっている特別展の企画の準備の様子が知的好奇心をそそるのだ。 とはいえ、正直云って彼らの平素の業務は日常の管理と印刷物の発注ぐらいで本書のメインとなっている特別展の企画の準備の様子が知的好奇心をそそるのだ。 特別展のパンフレットの校正の様子はもとより、特に青十が趣味で集めていた絵葉書の内容から日記に記載されているものを探し出す作業が面白い。 特に当時の切手を頼りに昭和12年に葉書の郵送費が値上がりした史実に基づいて時系列に並べて関連性を繋げたり、また日記の記述から当時の貨幣価値を探るといった歴史探偵的興趣に溢れている。そこで参考にされていた『値段の風俗史』という本は個人的にも興味を覚えた。いつかは手元に置きたい書物だ。 また著作権が切れると出版社は遺族に金を支払う義務が発生しなくなるので一気に復刊やリメイクが進むことになることも昨今の昭和の名作の復刊ブームや映像化の現状を見ているようで興味深い。なお本書では著者の没後50年が期限と書かれているが、令和元年現在では没後70年まで延長されている。 また当時の記述から流行や風物を問答で探るなども実に面白い。私がやりたい仕事とはまさにこのようなものだ。 登場人物らが実に人間的であるがために後半の殺人事件が起きてからのギャップが激しい。 才蔵をして春の陽だまりのようなのんびりとした穏やかな職場だと云わせた記念館が一転人間不信の塊の伏魔殿のように変わっていくのは物語に、登場人物たちに没頭していただけに何とも切ない思いがした。 またデビュー作『ぼくのミステリな日常』が会社の社内報という印刷物という位置付けであったことで各編にその月の内容を記載した目次が挿入されていたのが特徴的だったように、本書でも若竹氏は色んな資料を物語に取り入れている。 まさに印刷され、そこに字が書かれて読まれるものであれば全てミステリに取り込む、それが架空の物であってもという若竹氏の刊行物や小説を含む書物への思いの深さを思い知る一端だ。 この物語の舞台を記念館としたのはなんとも皮肉だ。 記念館とは故人を偲び、その功績を、足跡を遺したいという想いから成り立っている。大抵の人は生きていた痕跡はその周囲の人の記憶に留まり、そしてそれらの人が亡くなることでやがて消えていく。 しかし記念館は形として、記録として残すことでその館が存在する限り、故人の記録や記憶は無くならない。 本書は思慕や想い出を遺したい、後世へと引き継ぎたいという一途な思いと過去を葬り去りたいと望んだ人たちが招いた悲劇。 生きていた証を残したいというのは誰もが抱く願望だ。しかし皮肉なことにそれらの人の思いとは裏腹に残したい物は全て消え去る。 そして案外故人の生前の痕跡を残す記念館は当の故人にとって葬り去りたい過去まで晒される、実に迷惑な代物なのかもしれない。 |
No.4 | 6点 | 884 | |
(2004/02/21 22:38登録) 普通。若竹の普通。ちょこちょこ小細工してるところも普通。 ただオチにキレがない。全体を貫く芯がないから、カタルシスもない。非常に普通なため、評価としては微妙。 |
No.3 | 3点 | テツロー | |
(2002/04/09 00:50登録) ストーリーはいまいちでした。ラストの犯人の一言も、どういう方向へ余韻を残そうとしているのか、どうにも意味をつかみ難い締めですね。また、このタイトルの意味もよく分かりませんでした。全体的に低調な一編だったと思います。 探偵役、最初は妹の方かと思っていたのですが…。ただ、この探偵役の兄貴も、感情的に走り過ぎるきらいがあると感じました。せめてこいつらが、もう少ししっかりした探偵役だったら、話も締まっただろうに。 |
No.2 | 4点 | 由良小三郎 | |
(2002/01/23 19:50登録) 密室に死体はあったけれど、どうやって密室を作ったかというジャンルでなく、アリバイの問題もトリックというほどでない。ずっと昔の人間関係が、犯罪を引き起こすというパターンはパターンだけれど、動機もチープ。平凡でお勧めできません。 |
No.1 | 4点 | はこ | |
(2001/04/20 20:26登録) 途中で犯人がわかってしまう〜。 あんまりおもしろくなかった。 |