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ミステリの祭典

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キリオン・スレイの復活と死
キリオン・スレイシリーズ/旧題『情事公開同盟』

作家 都筑道夫
出版日1977年10月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 6点 虫暮部
(2025/04/18 13:19登録)
 フーダニットよりも、事件の奇妙な様相に関するホワイが核心に据えられていて、
 「密室大安売り」=何故凶器が無かったのか。これは説得力があるし、密室の件ともまぁ繫がっていて上手い。
 「情事公開同盟」と「二二が四、二死が恥」は、明確な理屈ではなくやや曖昧な動機付けが、良いんだけど、もう少し深みが出る書き方なら更に良かった。

 一方で、「八階の次は一階」。自殺騒ぎは、操り犯にとっては(真の目的の為に)有意義だが、実は自殺志願者本人にとってはこれと言ったメリットが無い。殺人は自宅で発生したわけじゃないんだから、“夫が家出しました” で済む筈。つまり、彼女の混乱に乗じて操り犯が不合理な行動をさせているのである。それは作者が評論等で提唱する “論理的な謎解き小説” にはそぐわないのではないか。キリオンはどういう論理でこんな真相を推理出来たのか。

 フーダニット色が強いのは「なるほど犯人はおれだ」。端正なパズラー然としたダミー推理に対して、実際には犯人の中途半端な行動がその様相の原因だったと言う真相。それは作者が評論等で以下同文。

No.2 5点 nukkam
(2022/04/05 07:59登録)
(ネタバレなしです) 1974年の出版当初は「情事公開同盟 新キリオン・スレイの生活と推理」だったキリオン・スレイシリーズ第2短編集で7作のシリーズ短編を収めています。個人的に好きなのは推理合戦風の「なるほど犯人はおれだ」と「密室大安売り」。特に前者はkanamoriさんもご講評で賞賛されていますけど論理的な推理が充実しています。推理の切れ味はいまひとつの感がありますが、ビルの八階の窓の外にしがみついて夫を殺したと自供する女という本格派らしからぬ場面で始まる「八階の次は一階」も印象的です。「キリオン・スレイの死」は暴力団がらみのハードボイルド風なのが異色ですが、ハードボイルドとしても本格派推理小説としても中途半端に終わってしまったような気がします。

No.1 6点 kanamori
(2012/10/13 13:10登録)
自称・前衛詩人の変なアメリカ人、キリオン・スレイが探偵役の連作シリーズ第2弾。
ミステリ的には不可解で魅力的な謎の提示に対して、解決が肩透かし気味なものも散見されますが、スタイリッシュで都会的雰囲気が読み心地がいいですし、覚えたての日本語の慣用句を誤使用するスレイのとぼけたユーモア部分も面白いです。
収録作の中では、警察監視下のバーのトイレが現場の三重密室もの「密室大安売り」がハウダニットものの良作。伏線の出し方が巧妙です。
「なるほど犯人はおれだ」は、殺人現場の証拠物件からキリオン・スレイを犯人と指摘する大学生によるダミー推理のほうがロジカルなような(笑)。

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