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ミステリの祭典

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トラブルはわが影法師
チェスター・ゴードン

作家 ロス・マクドナルド
出版日1962年01月
平均点4.67点
書評数3人

No.3 4点 クリスティ再読
(2018/01/26 22:48登録)
ロスマクって大体半分くらいは事前にすでに読んでるんだが、非アーチャーものは初めて。そう期待して読んだわけでもないのだが..どっちかいえばとっ散らかった内容で、お安いスリラーである。戦時下の市井の描写はそれなりにリアルだが、スパイといってもそのリアリティは希薄。要するに戦時下に作られた防諜プロパガンダ映画くらいのノリのもの。
それでも舞台をホノルル~デトロイト~大陸横断鉄道~西海岸と動かしていく手つきで興味がつながる振り合い。結末がなんというかホントに空しいが、ただただ不毛、という感じで、積極的な意義を求めづらい。妙に凝った比喩を連発するのが、後年のロスマクに通じるけども、凝りすぎて意味不明になってカッコよくない。さすがの小笠原豊樹も手に余ってる。
少しアンブラーの「恐怖への旅」と似ている印象はあるが、アンブラーの政治センスをロスマクに求めるのはどうにも無理で、ロスマク修行期だね、というところか。あと、本作だと絶対にハードボイルドとは呼べないと思うがなぁ。
(思うんだが...「さらば愛しき人よ」を意識してない?)

No.2 5点
(2017/08/17 10:42登録)
ケネス・ミラー名義で発表された第2作は、デビュー作と同じくスパイ小説で、一人称形式という点も同じです。1945年2月、ハワイで起こった事件は自殺として処理されますが、今回の語り手ドレイク少尉はスパイ活動絡みの殺人ではないかと疑います。さらにデトロイトでも自殺とみなされる事件が起こり、という展開で、大陸横断鉄道でのサスペンスなどは、アンブラーの『恐怖への旅』等とも通じるところがあります。
タイトルについては、途中で「トラブルのほうが、ぼくを摑まえて放さないんだ」「まるで、トラブルはきみの影法師だ」というセリフが出てきます。しかしドレイク、かなり自分の方から事件に首を突っ込んでいってます。
全体的にはおもしろいのですが、クライマックスに向かう部分が偶然に頼りすぎている点、最後のどんでん返し部分が何となく安っぽくなっている点等、不満もあり、これくらいの評価です。

No.1 5点
(2012/08/13 10:41登録)
Trouble follows me 直訳すれば、「トラブルがついてくる」
このほうがわかりやすい。「トラブルはわが影法師」だと深読みしてしまう。まあでも、なかなか良いタイトルです。

前半では主人公のドレイクが2つの殺人事件に遭遇する。中盤では大陸横断列車へと場面が変わり、ドレイクはさらなる事件に巻き込まれる。構成にメリハリはあるが、この巻き込まれ方の流れはすこし不自然にも感じる。
そんな中途半端なところが、作風にも出ているのか、本格ミステリといっていいのか、スパイ小説といっていいのかわからない。第二次世界大戦中の話で、ブラック・イスラエルという秘密結社も登場して徐々にスパイ小説らしくなるが、そうはいっても国際謀略風味は希薄だし、かといってアクション・シーンも少ししかなく物足りない。
読み終えてみれば、意外性もあったし、ミステリとしてはまあまあといったところなのだろうが、物語としては、ちぐはぐな印象を受けた。

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