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ミステリの祭典

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エラリー・クイーンの事件簿2
エラリイ・クイーン

作家 エラリイ・クイーン
出版日1974年04月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 6点 ことは
(2022/04/24 00:51登録)
数十年ぶりの再読。
ノベライズのため、心理描写が薄いからだろう。読み応えが軽い。けれど、それぞれの作品に、見どころがないわけではない。
・「〈生き残りクラブ〉の冒険」
このプロットは好きだ。ある日本の有名作品を思い起こした。手がかりの提示シーンの演出もよい。犯人指摘シーンの演出は、警視が無能に見えていただけないが、ラジオ向きの演出として作られたのだろう。
・「殺された百万長者の冒険」
プロットとしてはみるところはないけれど、手がかりと推理はなかなか面白い。スポーツ観戦と移動手段は、当時としてはキャッチーだっのではないかなと感じた。
・「完全犯罪」
元の長編と構図は同じだか、犯人指摘の段取りは違う。ある1点から事件の構図を転換させるまではよいが、その後の人物特定は即断だろう。とはいえ、競売シーン(元の長編と同じ展開だが、こちらのほうがテンポがよい)など、楽しいシーンもおおいので、佳作ですね。

No.2 6点
(2014/06/23 22:58登録)
ラジオドラマ2本と映画1本のノベライゼーションですが、そのうち最もいいと思ったのはTetchyさんと同じく『<生き残りクラブ>の冒険』。実はこのアイディアを、クイーンは長編で2回部分的に、また短編でも使っていますが、今回はなかなか鮮やかです。訳者あとがきで、日本人には予備知識がないことが手がかりになっているとしているのはそのとおりですが、推理が明確で、さほど気になりません。むしろ、動機なき殺人の『殺された百万長者の冒険』の手がかりの方が、現代の日本人にはピンとこないでしょう。
元が映画の『完全犯罪』は、人間関係や犯人の設定については以前の某長編とほとんど同じです。しかし、犯行方法や手がかりなどは全く変えていて、むしろ本作の方がすぐれていると思えるところもありました。これは『事件簿1』の『消えた死体』が別の某長編のトリックを全く別設定で利用していたのと好対照と言えるでしょう。

No.1 5点 Tetchy
(2012/07/31 22:34登録)
東京創元社が独自に編んだエラリー・クイーンの作品集。このうち『~事件簿1』は現在でも入手可能なのに、こちらはなぜか絶版状態。従って本書は図書館で借りて読んだ。

なんといっても収穫は1編目の「<生き残りクラブ>の冒険」。戦争で撃沈されたある戦艦の生き残りの子孫たちで構成されたクラブという設定も本格ミステリの特異性が光るし、彼らが生き残ることで得られる報酬のために次々に死んでいくという設定もミステリアス。明かされた真相はツイストが効いてて、読み終わったときは実にクイーンらしいと感じる趣向に満ちている。これが読めただけでも収穫だ。

「完全犯罪」は殺人現場の状況と銃声が起きた時間との相関関係への考察が複雑で理解に苦しんだ。このような室内での弾道の解明などは文章よりも『CSI』のような映像の方が一目瞭然で解りやすい。もうこのような緻密な推理物は読むのがしんどくなってきてしまった。

作品の出来栄えとしてはいささか物足りなかったが、内容的に絶版にする意味があるようには思えないので(評価が低いという点はあるが)、復刊フェアの一冊として近い将来本書がリストに載ることを期待しよう。

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