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ミステリの祭典

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雪花嫁の殺人
警視庁捜査一課事件簿

作家 阿井渉介
出版日1994年03月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 6点 nukkam
(2022/09/25 01:02登録)
(ネタバレなしです) 1994年発表の警視庁捜査一課事件簿シリーズ第3作の本格派推理小説です。死体の周囲の雪の上に犯人の足跡がない謎も十分に魅力的ですが、人にぶつかって雪の上に足跡を残して行くのまで目撃されながらその姿が見えない透明人間の謎は私にとっては前代未聞の謎でした。シリーズ前作の「風神雷神の殺人」(1994年)は犯人の超人的活躍(?)が印象的でしたが本書の犯人も負けていません。突っ込みどころを挙げたらきりがありませんけど、雪の中に浮かび上がる白装束の花嫁(犯人?)の幻想的演出も含めて敢闘賞をあげたい意欲作です。探偵コンビの片割れである菱谷刑事が精彩を欠いてしまっているのが少し残念ですが。

No.2 5点 メルカトル
(2021/12/08 23:02登録)
底知れぬ哀しみを抱く白無垢姿の殺人者
警察をも牛耳る政界の黒幕、壬生一族が次々と無残に殺されてゆく。

警察をも牛耳る政界の黒幕、壬生興之介。その息子で乱行を重ねる道安が殺された。雪の凶行現場には白無垢姿の「花嫁」がいた!私兵を用いて報復を図る興之介を嘲(あざけ)るように起こる第2、第3の犯行。美しき殺人者の向こうに浮かびあがる、6年前の悲惨な出来事とは?警視庁捜査一課シリーズ、渾身の第3弾。
Amazon内容紹介より。

可もなく不可もなくと云った感じですかね。足跡のない雪密室や、雪に足跡だけ残して去って行く影など魅力的な謎がてんこ盛りです。果たしてとんでもないトリックが待っているのか、それとも肩透かしを喰らうのか、微妙な心持で読み進めました。結局、第一の事件は×××だからアウトだし、他の不可能犯罪やアリバイトリックもショボいもので、やはりなと諦観の気持ちが強かったですね。正直、不可能性よりも不可解さが先立ってしまって、所詮大トリックなど期待できないだろうとどこかで思っていた部分があるせいでしょうね。

まあしかし、酒と博打大好きな刑事菱谷が魅力的だし、何より堀と菱谷の娘葉子の恋の行方が気になって気になって。個人的にはそちらの方が何だか読みどころみたいな感触でした。解説を読むと列車シリーズのスケールの大きな不可能犯罪のトリックが是非とも知りたくなりました。でも読まないかも知れませんけど。

No.1 5点 E-BANKER
(2012/08/06 22:10登録)
堀&菱谷両刑事が活躍する警視庁捜査一課シリーズの第3弾。
季節感を無視したセレクトでスミマセン・・・(この暑いさなかに「雪花嫁」って・・・)

~警察をも牛耳る政界の黒幕・壬生興之介。その息子で乱行を重ねる道安が殺された。雪の中の凶行現場には白無垢姿の「花嫁」がいた! 私兵を用いて報復を図る興之介を嘲るように起こる第二、第三の殺人。美しき殺人者の向こうに浮かび上がる、6年前の悲惨な出来事とはなにか? 警視庁捜査一課シリーズ渾身の第三弾~

作者のテイスト全開の作品。
阿井氏の作品といえば、「列車シリーズ」から本シリーズに至るまで「不可能趣味」+「重い動機」という2つのエッセンスで貫かれている。
本作でも、過去の悲惨な事故に端を発した連続殺人事件が起こるが、殺人者の怨念とも思える叫びが聞こえてくるかのような暗く重いストーリー・・・
真犯人については、前半からほぼ察しがついてしまうのだが、恐らく作者もあまり隠す意思がないのだろう。
(何しろ、「名前」からして真犯人としか思えない)

ということで、本作はあくまでも「ハウダニット」に拘った作品ということでよい。
トリックはずばり「雪密室」。
サッカーグランドの真ん中で発見された死体と被害者以外に足跡のない現場、そして越後湯沢の別荘地の庭でも同じように雪の中で足跡のない殺人が2件も発生し、しかも目に見えないほどのスピードで犯人が移動する・・・
魅力的な設定なのだが、トリック自体は前例のあるものなのが残念。
もう一つのアリバイトリックもかなり力技で、現場の地理的感覚がないと読者には推理不可能ではないか?

個人的には好みの範疇なのだが、かといってミステリー的に優れているという作品ではない。
ちょっと作者の「型」(不可能趣味+重い動機)に拘り過ぎたという感覚が拭えなかった。

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