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ミステリの祭典

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死命

作家 薬丸岳
出版日2012年04月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 6点 パメル
(2024/06/17 06:07登録)
榊信一は、デイトレードで巨万の富を築いた成功者。澄乃という恋人がいるが、性的欲求が高まると、全ての女性を殺したくなるという衝動を内に秘めている。末期癌で余命宣告されたことを契機に、欲望に忠実に生きることを決意し、次々と殺人を犯していく。一方、警視庁捜査一課の蒼井凌は、組織捜査に馴染まない一匹狼だが、独特の勘の持ち主である。胃癌の再発で奇しくも同じく余命宣告された日から、連続女性殺害事件の捜査に執念を燃やす。追う者、追われる者、共に長く生きられないタイムリミットの設定に惹き込まれる。
物語は、この二人に澄乃を加えた三人の視点から交互に描かれる。物語の進展につれて、榊の殺人衝動のもとになった少年時代の事件が浮かび上がる。異常心理による快楽殺人を扱ったクライム小説であり、連続殺人のホワイダニットをめぐる本格推理小説であり、執念の捜査を描いた警察小説であり、禁断の恋の行方を追う恋愛小説の四つを同時進行で味わうことが出来る。
しかし最大の読みどころは、病魔に死命を制された二人の男が残された生命をかけて文字通りの死闘を展開する息詰まるサスペンスである。とはいえ、結末は想定の範囲内であり、既定路線なところには不満が残った。

No.2 6点 虫暮部
(2013/01/18 22:19登録)
 余命わずかな人間にとって犯罪の抑止力になるものはあるのか、という魅力的なテーマは良かったが、残念ながらテーマに負けてしまった感がある。
 落ち着きどころを求めてか、途中で登場人物の事故死という御都合主義的展開に走ってしまったのが大問題。
 また、かなり終盤まで微妙に思わせぶりな書き方をしているが、それに見合うほどのトリッキィなどんでん返しはない。勿論、私の読み方の問題ではあるが、骨太なサスペンスとしてもう少しストレートな書き方であれば、もっと素直に楽しめたかも知れない。 

No.1 8点 akkta2007
(2012/07/18 17:19登録)
久しぶりに面白い作品に出会ったような気がする。
少々、重たい気もするが、読み始めると夢中になり、最後まで一気に読んでしまった。
とても良い作品であった。

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