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ミステリの祭典

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ホテル・ピーベリー

作家 近藤史恵
出版日2011年11月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 ことは
(2022/11/13 00:57登録)
本作はミステリ観点から一言でいえば、ハワイを舞台にしたホワットダニット。
前半は、(明確に提示されない)悩みを抱えた語り手による、ハワイ観光案内つき、登場人物紹介。内省的な語りより、なにか起こりそうな不安感を醸し出す。
中盤、事件が起きてから、ホテルの滞在人物の怪しい点がいろいろ判明し、流れるように最後まで読めた。なかなか面白い。
いくつかの怪しい話を並列させていて、展開をよませなかったが、そのせいで、それぞれの話の書き込みが浅く、「最後がああなるのなら、もっとここを書き込んでほしい」とも思った。まあ、書き込みが少ないのは、読みやすさ優先の意図かもしれない。
語り手が、共感できないキャラなのも、きっと意図的で、王道的な巻き込まれ型サスペンスにならないよう、たとえば、フランスの犯罪小説風な味わいを目指したのだろうと思う。
印象的なシーンは、中盤、主人公が「他人の事情はよくわかる」と思いながら、ある諍いを目撃するところ。こういう心理戦の描写は、近藤さん、うまいよなあ。

No.1 6点 猫サーカス
(2017/12/28 15:50登録)
ハワイが舞台の青春ミステリ。木崎は友人に勧められ、ハワイ島ヒロのホテルへ来た。居心地が良く、食事もおいしい小さな宿。オーナーは日本人夫婦で、宿泊客もみな日本からの旅行者だ。そこで、木崎は少しずつホテルの女主人・和美と親しくなっていく。だが、宿泊客をめぐり、不可解な出来事が続いていく。ここに描かれているのは観光客でにぎわう華やかなリゾート地というイメージとはいささか異なるハワイ。陰のある主人公をはじめ、訳ありな登場人物が多く、ホテル自体も謎めいている。心の奥の秘めた感情や官能が揺り動かされるような巧みな語りにより、サスペンスが盛り上がっていく。真相を知った驚きと苦く切ない青春の物語が混然として、読後いつまでも作品世界から離れられない。

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