ゴースト・タウンの謎 ジョニー・フレッチャー&サム・クラッグ |
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作家 | フランク・グルーバー |
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出版日 | 1965年07月 |
平均点 | 6.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 7点 | 人並由真 | |
(2020/05/20 20:51登録) (ネタバレなし) ポンコツ車でカリフォルニアまで商売に来たジョニー・フレッチャーとサム・クラッグのコンビ。西部の僻地に向かう路上でガス欠になって難儀した二人は、サムに優るとも劣らない体格の男ジョー・カッターの世話になる。だが無償の善意で助けてくれたかと思いきや、カッターは過剰な謝礼を要求。ジョニーたちはスキを見て逃げ出そうとするが、ポンコツ車の中には見知らぬ男の死体が乗せられていた。やむなく車を捨て、徒歩&ヒッチハイクで旅を続けようとする二人だが、そんな彼らが泊まったホテルでは、銀鉱の鉱山所有権を巡る騒動が生じていて……。 1945年のアメリカ作品。厳密には同年の何月頃の刊行かは知らないが、このタイミングで戦争の影もほとんどない内容なのに軽く驚き。辛く長い嫌な日々はあえて振り返らず、まずは一編のエンターテインメントを楽しんでくだされという送り手(作者&編集者&版元)の意向か? 昨今の論争社の発掘新訳が好調な本シリーズだが、改めてまだ読んでない旧刊の方はどんなもんなんだろ? と思って手に取った本作。そうしたら、キャラの立った登場人物たち、休まることない馬鹿騒ぎ、間断なく生じる事件またはピンチ……と、これまで読んだこのシリーズの中では、一番スラプスティックコメディ&サスペンスとして面白かった。 さらにkanamoriさんも書いておられるが、蟻の巣のようにはりめぐらされた地底の坑道の闇の中を、ジョニー&サム(それにゲストヒロインのヘレン)がうろつきまわる様は少し『孤島の鬼』『八つ墓村』的なティストもある(笑)。 あと作者のグルーバー、こういうシリーズキャラクターものではたぶん暗黙の了解で普通はあんまりやらないんじゃないかなあ、とこちらが勝手にそう思い込んでいた<とある不文律>を、ごくあっさりと実践してしまっている。職人作家でも<そういうこと>をするんだなあ、と思うほどに。もちろん、あまり詳しいことは言えませんが(笑・汗)。 ミステリとしては(いま言ったそんなちょっとした軽い驚きにからんで)最後に意外性が用意されているのはいいんだけれど、ソレがちょっと唐突というか、かなり乱暴。 正直、今回は読者を驚かせるために、最後の最後でその効果を得る前提だけから始めて、逆算的に真犯人をそこにシフティングした感じがいつも以上に強いかも。 あと、事件解決後の最後の人間関係のまとめかたもかなりイキナリ……なんだけど、こっちはまあ、シリーズキャラクターもののミステリの王道を突き詰めた感じもあり、ある種のメタ的な感慨みたいなものも抱かないでもない。 出来がいいとか、完成度が高いとは決して言えないけれど、とにかく読んでいる間の楽しさは第一級。それだけで十分に価値のある作品であった。 評価はそんなゆかしさに見合った、この点数ということで。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2013/01/16 13:01登録) 怪しげなボディビル本のセールスで全米各地を旅しながら、遭遇した殺人事件の謎を解く、フレッチャー&クラッグの凸凹コンビによるドタバタ・ミステリ。 いちおう軽ハードボイルド風の語り口なので「ハードボイルド」に分類しましたが、いろいろな要素がごった煮のように入っていてジャンル分けが難しいシリーズです。 本書でいえば、金欠病解消のため信用詐欺を重ねる二人の珍道中はユーモア・コンゲーム&ロード・ノヴェルといえるし、アリゾナ州トゥームストン(=ワイアット・アープの「OK牧場の決闘」で有名)での銃撃戦はウェスタン小説の雰囲気があるし、暗闇の地下坑道をさまようさまは冒険小説そのものです。 いずれもテンポのいい場面転換で面白く飽きさせませんが、そもそもの発端である銀鉱山の採掘権利を巡る殺人事件の解決部分が唐突で、謎解きミステリとしては弱いのが残念です。 |