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ミステリの祭典

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メグレ間違う
メグレ警視 別題『メグレの失敗』

作家 ジョルジュ・シムノン
出版日1976年09月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 6点 クリスティ再読
(2022/02/07 21:58登録)
本作ホントにメグレ物でよかったのかなあ...なんて思う。教授のキャラは一般小説のシムノンの方が生きたような気がするのだ。してみると「メグレで間違い」?
うん、お二方のおっしゃる通り、教授のキャラがすべての小説。脳外科医としてすべてを献身しているような教授の唯一の悪癖の話である。これによって周囲の人々が傷つくのだけど、教授にはそれがまったくわからない。共感性がそもそも欠落した人間のわけだ。
「メグレ式捜査法」はその共感性がベースなのだから、教授はメグレにとって天敵みたいなものだろう。だからこそ、最後まで対決をメグレはためらい続ける...

周知のようにメグレは愛妻家だから、浮気したらみんな幻滅しちゃう(苦笑)。けど生みの親のシムノンはとんでもない性豪だったらしいからね。そうしてみると、この教授のキャラにもメグレのキャラにも、シムノン自身のなにがしかが投影されて、「等価値の反対」として造型されているのだろう。

(けど教授の秘書さん、さもありなむ...人間、そんなもの)

No.2 5点 tider-tiger
(2016/06/19 10:27登録)
空さんの仰るとおり、教授が強烈。強烈とはいっても漫画的な誇張などはなく、淡々と描いた結果、強烈になってしまったという風。ぜんぜん好きにはなれない人間ですが、言っていることはあながち間違ってはいないような気もします。作中、献身についてこの人物が意見を述べる場面がありますが、かなり痛烈。本当に頭の良い人っていうのはこんな感じなのかもしれませんね。
タイトルの「間違う」が何を意味するかは読む人によって意見が分かれそうですが、私見では、とある登場人物の行動についてメグレが読み違え、教授に「それみたことか」と嘲笑われる場面のことを指しているのかなという気がしました。
メグレはこの教授にささやかな抵抗を見せますが、今回ばかりは負け犬の遠吠えのように聞こえてしまう。おろおろとするメグレを見ることができる珍しい作品。
個人的にはこの教授に会えただけで一読の価値ありと思いましたが、あえてお薦めはしません。

6/26追記
「俺、間違う」
本作は記憶に頼っての書評でしたので、間違いがありました。
教授が献身についてウンヌンと書きましたが、あれは教授の意見ではなく、教授だったらそんな風に考えるだろうというメグレの想像でした。ただ、確かにあの教授だったら献身についてそんな風に考えるだろうなと思えます。

No.1 6点
(2011/03/06 08:31登録)
タイトルにもかかわらず、メグレが特に重要な点で推理を間違えるわけではありません。途中で、自分の捜査方法が間違っているのではないかと気にするところはありますけれど。
本作では、事件の中心人物である有名な外科医のキャラクターが独特です。メグレもこの外科医を新聞などで知っていたという設定ですが、この人物になかなか会おうとせず、周囲の人物からいろいろ聞き出して攻めていっているところがおもしろいというか。作中でも述べられているように、この外科医がメグレ自身の「等価値の反対」的な存在であるため、そのような捜査の仕方になったということです。たぶん、本書を読んでこの人物に好印象を抱く人はめったにいないでしょうが、それでも奇妙なインパクトのある人物です。

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