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ミステリの祭典

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騙す骨
スケルトン探偵ギデオン・オリヴァーシリーズ

作家 アーロン・エルキンズ
出版日2010年11月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 E-BANKER
(2011/10/21 14:13登録)
スケルトン探偵シリーズの最新作(この時点で)かつ第16作目。
今回の舞台はメキシコ南部の田舎町。
~妻ジュリーの親族に招かれメキシコの田舎を訪れたギデオン夫妻。だが、平和なはずのその村で、不審な死体が2体も見つかっていた。銃創があるのに弾の出口も弾自体も見当たらないミイラ化した死体と、小さな村なのに身元が全く不明の少女の白骨死体だ。村の警察署長の依頼で鑑定を試みたギデオンは、次々と思わぬ事実を明らかにするが、それを喜ばぬ何者かが彼の命を狙い・・・~

「さすが!」とでも言いたくなる良作。
実は本シリーズを読んだのは初めてだったわけですが、16作目でこのクオリティとは恐れ入ります。
ギデオンやジュリーのキャラクターや、登場人物との掛け合いなども翻訳作品とは思えないほどの読みやすさで、スッと頭に落ちてくる感じ。
「骨」を鑑定するたび、事件の様相が次々に切り替わり、最終的には「見事ミステリー的に」収束させる手際にも感心しました。

ただ、難を言えば、やはり「謎」のほとんどが、「骨」経由で判明しているため、読者としては直接の推理が不可能なところでしょうか。
(もちろん、あくまでミステリーですから、恐らくは主要登場人物が何らかの形で関わっているのだろうとの予想はつきますが・・・)
そういった短所を勘案しても、読む価値は十分。
(外国人の名前は頭に入りにくいが、ラテン系の名前は特に覚えにくい。せめて作中表記はファーストネームで統一するとかしてもらえれば・・・)

No.2 5点 nukkam
(2011/09/14 23:08登録)
(ネタバレなしです) 2009年発表のギデオン・オリヴァーシリーズ第16作です。ギデオンがスケルトン探偵と呼ばれていることを聞いた作中人物が「知り合いにミイラ探偵なんていないかな」と冗談めかしていますが、そういえば私もこのシリーズは妖怪が主人公の作品と誤解して、なかなか手を出さなかったのを思い出しました(笑)。犯人が意外と早く判明し、その時点でギデオン・オリヴァーはまだ五里霧中状態でまだまだ多くの謎が残っているという、ちょっと珍しいプロットです。残念ながら最後の手掛かりが(一般読者には予想のしようもない)骨の分析結果では謎解きプロセスとしては不満があります(「骨の島」(2003年)と同じ問題点)。とはいえ文章も説明もしっかりしているところは評価できます。

No.1 7点 Tetchy
(2010/12/06 21:40登録)
毎年この時期になると訳出されるのが恒例となってきた。
本作はこのシリーズの原点回帰ともいうべき作品と云えるだろう。
スケルトン探偵シリーズと銘打っているだけに、本書の最たる特徴そして魅力は形質人類学教授ギデオン・オリヴァーの学術的な骨の鑑定にある。それが最近の諸作では観光小説の色合いが強く出ており、それがおざなりになっていた感がある。特に前々作の『密林の骨』では骨の鑑定そのものが添え物でしかなかったくらいだ。
それが本書では3つも骨の鑑定が盛り込まれている。
1つはミイラ化した身元が解っている死体の死因についての鑑定。
もう1つは白骨化した身元不明の死体の性別・年齢を解き明かす鑑定だ。
そして3つ目は最後の最後に本書の真相解明として大きく寄与する博物館に展示されている古代サポテク族の頭蓋骨の鑑定。
しかもこれら全てが専門家に一度検分され、身元が推定された物であり、それらをギデオンが鑑定することにより、覆されるという複雑な特色を持った骨ばかり。正に題名に相応しく専門家達を「騙す骨」なのだ。

心和む作品世界は第16作になっても衰えるところが無く、慣れ親しんだところに帰ってきた感があり、非常に読んでいて心地がよかった。

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