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ミステリの祭典

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神学校の死
アダム・ダルグリッシュ

作家 P・D・ジェイムズ
出版日2002年07月
平均点4.67点
書評数3人

No.3 6点 ことは
(2023/11/13 00:14登録)
ここ数作、いつも書いているが、ジェイムズ作は作を追うごとに読みやすくなっている。章立ても細かく、ポケミスで10ページを超える章があまりないくらいで、もはや、重厚という感じはなく、描写が濃いというレベルだ。これなら、アンドリュー・ヴァクスのほうが、よほど読みづらいぞ。
他に、ダルグリッシュ視点の章がかなりおおくなっているのも、読みやすい要因だろう。6割ほどがダルグリッシュ視点ではないか?
ダルグリッシュ以外の視点の章も、捜査側視点の章と、事件関係者視点の章が半々で、ジェイムズ作品としては驚くほど捜査側視点で物語がすすむ。いままでは、事件の捜査と、関係者の群像劇が、半々といった作品が多かったが、本作は、すっかり警察小説の味わいだ。
事件関係者視点の章でも、いままでどおりに人物がみっちりと描写はされるのだが、(いままでのように事件とあまり関係ない心理的葛藤ではなく)事件をふまえての心理描写なので、ミステリ的興趣が濃い。捜査の展開としても、後半のある事実が判明するところは「おっ!」と思ったし、全体としてそうとう面白い警察小説になっている。
途中までは、「これは、ジェイムズ作でいちばん好きかも」と思ったが、最後がだめだった。警察小説だとしても、これはミステリとしての興趣がなさすぎる。これで少し減点。
他に特徴をあげると、本作ではダルグリッシュの視点がおおいだけでなく、ダルグリッシュについても、今までになく筆が費やされている。いくつか上げてみると、ダルグリッシュの自宅が紹介されたり、舞台がダルグリッシュが学生時代を過ごした場所だったり、そのためダルグリッシュの過去の回想シーンが(!)あったり、ダルグリッシュの詩があったりする。前作をふまえてのダルグリッシュの思いや、ダルグリッシュがチームのメンバーに思いをはせたりなど、心理描写もおおい。
本作以降の情報にふれてみても、本作以降もダルグリッシュの私生活は重要要素のようで、きっと、作者が80歳をむかえて、ダルグリッシュについて書きたくなったのだろうと感じた。
しかし、それにしても、本作のラストのダルグリッシュの行動は、唐突感がおおきい。交流シーンは、ほんの数回しかないぞ。
ひるがえって、ミスキン警部は、残念ながら出番が少ない。それでも、エピローグ前のメイン・ストーリーの最終シーンで見せ場があるのは、ファン向けのサービスかな。

No.2 5点 nukkam
(2015/01/09 15:22登録)
(ネタバレなしです) 2001年発表のダルグリッシュシリーズ第11作の警察小説で、ダルグリッシュにとって重要な存在となるエマ・ラヴェンナムが初登場する作品です。宗教世界を舞台にして多彩な人物描写で読ませる点でケイト・チャールズのデイヴィッド・ミドルトンブラウンシリーズを連想しましたが、受けた印象は大分異なります。どちらも人物描写には定評あるのですが、ケイト・チャールズは喜怒哀楽の対比をきっちり描いてわかりやすい人間ドラマです。一方ジェイムズは一部を除くと感情に抑制を効かせたようなところがあり、それが重厚で暗く地味な作風につながっているようです。推理が少なく読者が謎解きに参加する要素はあまりありません。純文学的な作風を高く評価されている作者ですが個人的には謎解きの面白さが物足りないです。あと本筋とは関係ありませんが、第2部第6章で黄金時代の女流作家の本が登場しますが、セイヤーズ、アリンガム、マーシュ。ああクリスティーがありませんね。機会あるごとにクリスティー批判していたジェイムズらしいです(笑)。

No.1 3点 江守森江
(2010/12/15 22:30登録)
AXNミステリーで本作のドラマ版が二週に渡り放送された(正味200分の大作)
宗教色を纏った作品はミステリーの中でも一番苦手な分野でドラマ版すら面白く感じなかった。
それでも敢えておさらいに挑戦?しに図書館へ出向いたが、ポケミスで500ページ弱のボリュームに完全にノックアウトされた。
英国には、神職にあっても節操ない連中がウジャウジャ居る事しか頭に残らない(まだ生臭坊主の方が愛嬌があるかな?)
苦痛に耐える読書に歓びを感じるマゾ体質な方にはうってつけな作品とだけ記そう!

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