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ミステリの祭典

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都会の狼
検事 霧島三郎シリーズ

作家 高木彬光
出版日1966年01月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 人並由真
(2023/04/17 04:57登録)
(ネタバレなし)
 昭和37年8月の宮城刑務所。暴力団・末広組の若手幹部で、対抗勢力の大物を射殺したのち自首して服役していた模範囚・安藤健司は、かねてより旧知の間柄だった死刑囚・小山栄太郎の刑の執行を見届ける。所内で健司と運命的に再開した小山は、終戦直後に健司と彼の母が大陸から引き上げる時に、命がけで面倒を見てくれた大恩人であった。その小山は強盗殺人の嫌疑で逮捕され、死刑の判決を受けていたが、最後まで己の無実を叫びながら、死刑台の露と消えた。そして昭和40年。仮釈放になった健司は、小山が「真犯人かもしれない」と告げた本名不明の男「ザキ町のジャック」を捜すが、かたや職務で小山の死刑に立ち会った青年検事・霧島三郎もまた、かの小山は冤罪ではなかったかと疑問を抱いていた。そんななか、健司の周辺で予期せぬ殺人事件が。

 霧島三郎シリーズ第四弾。これまでの三冊はカッパ・ノベルスで読んできた評者だが、これは本シリーズで初めて角川文庫版で通読。
 500頁の長丁場で読むのに二日かかったが、もともとが小刻みに山場を設けた新聞小説という形質のせいか、リーダビリティは良好でサクサク読める。

 作劇の上では霧島三郎と並んで、健司がもうひとりの主役だが、これはシリーズ4弾めに際して、少し幅を広げた方向でやってみようとした感じ。
 出所した主人公がヤクザ世界との距離感を絶えず気にしながら、ニセ私立探偵の風体で過去の事件を散策して回る図は、昭和の通俗ハードボイルドっぽいが、これはこれでなかなか面白い。
 読み進めるこっちも、どうせそのうちどっかのタイミングでパズラーっぽく転調するんだろうという期待感もあって、その辺のワクワクぶりも心地よい。

 でまあ、真犯人というか、事件の真相はかなり意外であった(といいつつ、先読みできた部分もあるんだけれど)。
 この長さに見合う密度? 結晶度? かというと、やや微妙だが、読んでるうちは楽しめて、最後の背負い投げはかなり鮮やかに決められた思いはある。
 評点は、7点に近い、この点数で、というところで。

 なお角川文庫版の解説は山村美紗が書いてるが、いささか無神経に自分の主張ばっか述べていて(その内容自体は、まあまあよいのだが)、かなりネタバレ気味なので、本文より先に読まない方がいいよ。 

No.2 6点 斎藤警部
(2015/06/15 15:05登録)
出所したヤクザが、恩義ある死刑囚(ヤクザの出所直前に執行!)の無実を証明しようと都会の暗所を奔走するサスペンス。彼が事件の真相に近づく度、重要関係者と目星を付けた人物が次々殺されて行く。。
などと書けばまるでありきたりなストーリーの様ですがなかなかどうして、粗筋だけでは知り得ない長篇小説の力が全篇に漲(みなぎ)って読者の意識を離しません。 高木先生独特の微妙な間抜け味も重厚なストーリーといい具合にブレンド。 埋もれたままにしておくに惜しい、ちょっとした読み物です。 昭和30年代の残り香が強い40年代初頭の雰囲気もよく漂っていて悪くない。
それにしても、郷愁を誘う「伊勢佐木(ザキ)町のジャック」なる人物の呼び名。これひょっとして発表当時既にちょっとズレてる感じだったんじゃ。。

No.1 6点 kanamori
(2010/12/03 18:00登録)
検事・霧島三郎シリーズの4作目。
仮釈放中のやくざの組員が、死刑となった命の恩人のために真犯人を突きとめようと奔走するが、事件の証人が次々と殺害されていくというストーリー。光文社文庫で500ページの力作。
トリックらしいトリックはないものの、絡み合った人間関係でプロットを錯綜させ、真相を分かりずらくしています。物語性豊かで読み応えがありました。
妻・恭子のなにげないひと言で霧島が真相を察知するというのは、もう作者得意のパターンですが、楊貴妃の刺青に関する伏線はダジャレ・レベルでした。

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