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ミステリの祭典

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吸血蛾
金田一耕助シリーズ

作家 横溝正史
出版日1955年01月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 4点 りゅう
(2011/09/19 16:55登録)
 再読です。ファッションモデルが連続して殺されるという粗筋を覚えていたくらいで、犯人も真相も全く忘れていました。金田一耕助が登場する、猟奇的な作品で、狼男の登場、死体発見場面など、相変わらず過剰とも言える演出がされています。
 プロットが複雑すぎて、スッキリとしておらず、理解できない箇所が多いです。登場人物それぞれが不思議な行動を取っていて、さらにそれをサポートする人物が登場するなど、真相が見えにくくはなっているのですが。
 真相を読むと、ある出来事が原因となって、この犯罪計画が生じているのですが、ある出来事と全体の犯罪計画との結びつきに飛躍があるように感じます。動機に関して、ある出来事に係る殺人の理由は理解できるのですが、それ以外の殺人の理由は皆目わからないし、作品中でも明確に説明されていません。ムッシューQなる謎の人物の登場に関しても、ある人物がムッシューQを演じた理由には理解しがたいものがあります。
 最後まで、不明なことが多く、この作品では金田一耕助も精彩を欠いています。 この時期に書かれた猟奇的な作品の個人的評価は、「悪魔の寵児」>「幽霊男」>「吸血蛾」の順番です。

(ネタバレをしています。注意!)
 最初の発見死体は、人形工房でマネキンの入った箱とラベルの入れ替えが行われているのですが、犯人が死体の入った箱を工房に持ち込んだ際に、浅茅文代のアトリエ発注のマネキンの入った箱が近くにあったというのはちょっと都合が良すぎるのではないでしょうか。
 その他にも、3人のモデルが拘束された倉庫の場所を犯人がどうやって知ったのか、犯人が自分の名前を告げられる危険があったにも拘らず日高ユリに杉野弓子あてに電話を掛けさせたこと、当然犯人にも警察の監視が付いていたと思われるがそれをかいくぐって倉庫まで行けたことなど、わからないことが多すぎます。

No.1 5点
(2010/09/07 21:05登録)
開幕早々狼の牙のような歯を見せる怪人物が登場するという、いかにも通俗的な臭いがする作品です。第2の被害者の切断された脚のパフォーマンスなどばかばかしい限りですが、途中江藤老人側の視点から書かれた部分であっさり明かされてしまうその演出理由は、案外まともです。
連続殺人の動機は薄弱ですし、無理な(あるいは説明不足な)点も散見されますが、上述の部分を含め真相はほぼ筋道が通っていて、意外性もあります。通俗的刺激性が論理的な謎解きをうまく覆い隠しているのが効果的と言えるでしょう。
ただし有名作に比べると登場人物たちの描き方がいいかげんですし、金田一耕助の推理が貧弱で真相説明をほとんど犯人の告白に頼ってしまっているなど、不満もかなりある作品です。
珍しくタイトルが内容にそぐわない点も気になりました。

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