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ミステリの祭典

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椿姫を見ませんか
鮎村尋深と画家の守泉音彦

作家 森雅裕
出版日1986年03月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 虫暮部
(2022/05/20 14:55登録)
 自意識過剰な芸術科の学生達のキャラクターは上手く描かれている。ミステリとしてはさほどでもないかと思いつつ読み進んだが、ラストの “椿姫” 本番の場面はスリリング。ここだけで評価三割増しだ。諸々の事件の要因について、“そんな物の為に何人も死んだのか!” と言う虚しさとか嘆きとかが作中にもう少しあっても良かったのでは。
 再読。水墨画の場面は泡坂妻夫作品だと記憶違いしていた。

No.2 5点 nukkam
(2022/01/10 23:16登録)
(ネタバレなしです) 1986年発表の鮎村尋深(あゆむらひろみ)&守泉音彦シリーズ第1作です。本書では尋深が芸術大学の音楽学部の学生、音彦が美術学部の学生で友人以上恋人未満風な関係です。オペラの練習中に毒殺事件が発生し、生前の被害者から受けた相談電話を相手にしなかったことを後悔した音彦が謎解きに乗り出します。一方で意外にも尋深は謎解きにほとんど参加しませんが、容疑者たちとは複雑な関係がある模様で一時的ながら自身も容疑者になったりしていて探偵役というより事件関係者役です。主人公2人の青春小説要素が強くて時にミステリーらしさが希薄になりもしますが、終盤は本格派推理小説らしく音彦が(あまり論理的ではありませんが)推理で複雑な真相を明らかにします。しかしこれで解決ではなく、更にサスペンス溢れる展開が用意されています。

No.1 7点 kanamori
(2010/08/14 15:15登録)
プリマ・ドンナ鮎村尋深シリーズの第1弾。
私立芸大を舞台に、絵画の贋作事件が関わる殺人事件を描いたミステリには違いありませんが、本格ミステリとしては取り立てて眼をひくトリックがあるわけではありません。
それでも面白く読めたのは、ヒロインの鮎村尋深のぶっとびぎみで非常に魅力的な人物造形につきます。昔からの友人・守泉音彦とのコンビでのやり取りなど、ストレートな恋愛ものではない微妙な関係が絶妙です。
このシリーズは徐々にミステリから離れていきますが、絶版で簡単に読めないのがもったいない名品です。

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