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ミステリの祭典

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外道忍法帖
忍法帖

作家 山田風太郎
出版日1962年01月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 7点
(2021/08/22 10:48登録)
 島原の乱から十二年のちの慶安三(1650)年春、〈山屋敷〉と通称される江戸小日向茗荷谷の切支丹牢に、三つの軍鶏籠が運びこまれた。この処置はおよそ六十五年前の天正十三(1585)年三月十三日、大友宗麟・大村純忠・有馬晴信らキリシタン大名の名代たる四人の遣欧少年使節に下賜された、大画家チントレット描くところのマリア十五玄義図と教会建立・宗門弘布のための資金を見つけだすため、最悪の背教者・沢野忠庵こと元イエズス会長崎管区長、クリストファ・フェレイラが幕府に懇請したものであった。
 切支丹がこの国に公然満ちひろがる日まで、十五玄義図のマリア様と百万エクーの金貨を三百十三年間護りつづけてゆくという聖なる十五童女。その体内には秘宝の手がかりとなる純金の鈴が秘められ、四使節の最後のひとりジュリアン中浦からフェレイラにわたされた青銅の十字架をうちふれば、それと共鳴りを発するのだという。
 大友宗麟の曾孫・天姫を奉じ、切支丹忍法を使うという十五人の童女はどこに隠れているのか? 老中・松平伊豆守信綱が選びぬいた幕府の探索隊は侍臣・天草扇千代を頭領とする天草党伊賀忍者十五人、早くも青銅の十字架を奪い金貨奪取を狙う、牛込榎町の大道場張孔堂のあるじ由比民部之介正雪が繰り出す甲賀卍谷忍者も十五人、長崎と島原を舞台に三つの集団の壮絶な死闘を描く、風太郎忍法帖の極地!
 『忍者月影抄』に続くシリーズ第六作で、雑誌「週刊新潮」に昭和36(1961)年8月28日号~翌昭和37(1962)年1月1日号まで連載。年譜によれば前作および『忍法忠臣蔵』、加えて現代ミステリ『棺の中の悦楽』もコレと並行する形で進めており、本書のキ○ガイ趣向を考え併せれば正気を疑う他は無い(前昭和35(1960)年は割と控えめなので、この間にアイデアを蓄積していたのかもしれないが)。大友忍者+天草衆+張孔堂隠密組各15名×3に沢野忠庵や大友天姫も加わり、さして長くもない紙幅の中50名近くの異能者たちが殺し合うというとんでもない小説。無茶もいいところで、風太郎フォロワー数ある中にも本書のオマージュを試みた作家は当然皆無である。
 そういう訳で正直不安だったのだが、読み進めるとなかなかのもの。風頭山の紙鳶揚げからはじまって松森天神からペーロン船、唐人屋敷に出島、雲仙に舞台を移して千々岩の浜辺に地獄谷山中、おくんち祭りに切支丹牢、原城の廃墟にクライマックスの有明海と巧みに長崎の風物を取り込みつつ、十五童女たち各々の正体にも細かな工夫を凝らし健闘している。登場人物の多さゆえある程度のパターン化は否めないが、全篇に初期忍法帖特有の熱気が横溢しており水準以上の出来。メインの扇千代と天姫を巡る悲恋の物語として、作品に太い筋が通っているのも大きいだろう。最後の一節により前代未聞の殺戮劇に深い意味を持たせているのも心憎い。

No.2 2点 江守森江
(2011/01/06 00:17登録)
やっぱり忍法帖シリーズの本質は伝奇時代小説に名を借りたエロ小説だよ!(よってポリシー通りミステリーの範疇外な2点)
普通な官能小説を恥ずかしくて堂々と読めないシャイなオヤジ達の憩いのオアシスなのは間違いない。
処女を犯すのは、俗な言い方だがオヤジ族の夢だな〜!
映画版も安っぽくエロに突出してるが原作も娯楽として笑える。
「ファミ劇」で放送した映画版を性教育の一貫?で小学生(陰毛チョロチョロ、まだムケてない)の息子と観ても充分楽しめた。
息子が「僕もエロ忍法の使い手になりたい」とボソッと呟いた時には親子って似るもんだと実感した。
※余談(我が家の教育方針)
息子を子供扱いせず、自ら考えて行動する事と自己責任について切々と教育している(要はコンドームの大切さを教えている:マセた彼女がいるから今から準備)

No.1 6点 kanamori
(2010/07/08 18:44登録)
切支丹の隠し財宝を巡る三つ巴の忍法合戦。
あまりに多数の忍者が登場し名前を覚える前に死んでいきます。なにせ、伊賀忍者15名×甲賀忍者15名×切支丹童女15名が入り乱れています。
「甲賀忍法帖」などの使い回しの忍法であったり、戦いがあっけなく決着するケースが多々あり、合戦ゲームとしてはいまいちですが、財宝をめぐる伝奇ものとして楽しめました。

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