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ミステリの祭典

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三人の中の一人
ウェンズ氏

作家 S=A・ステーマン
出版日1977年06月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 人並由真
(2021/10/13 05:46登録)
(ネタバレなし)
 ベルギーのリエージュ地方にあるロベエルヴァルの城館。嵐が迫る夜、そこにサン・ファールと名乗る黒衣の男が訪れる。彼は城主ユーゴ・スリムが招いた賓客だった。城館には使用人を別にして、40歳前後のユーゴの若き美貌の新妻エレーヌ、ユーゴの可憐な19歳の姪フェルナンド、そしてユーゴの友人である外科医ネッペルが居住していたが、その嵐のなかで予期せぬ密室? 殺人が起きた。地元の野心家の予審判事ジルベェル・シャストは、なぜか捜査に積極的に首を突っ込むサン・ファールとともに事件を調べるが、やがて現場の状況は、あまりにも特異な殺人者の肖像を浮かび上がらせてくる……。

 1932年のフランス(ベルギー)作品。

 長年(何十年)寝かしていた蔵書を、弾みをつけて引っ張り出して読む。
 バカミスっぽい、いやバカミスそのもの、とは噂に聞いていたが、前半の殺人が起きるあたりは、割とまとも。
 しかし途中から、一応はマトモっぽいが、ちょっとよく考えると「おい、ちょっと待て」と言いたくなるような道筋での推理のロジックが進行し、ほーら始まった……という気分になってくる(笑)。

 そして中盤(全30章のうちの第×章)あたりにくると、さらにあまりにもトンデモなものを読まされるハメになり、アングリと口を開けた。詳しくはここではとても書けない(汗)。

 しかし最後には、意外に切れ味よくマトめた。やはり細部には強引な部分というか犯行の現実性で無理筋も感じないでもないが、遊戯文学としてのパズラーなら許される範囲。いくつかの着想は、なるほど評価に値する。

 ただしこれ、内容的に21世紀の今、復刻は難しいかもな。でもまあ国産ミステリのアレやアレとかも復刊されてるんだから、できないこともないか?
 稀覯本の古書を5ケタ出して買う必要は絶対にないけれど、懐に余裕があったらそこそこのお値段(あなたの納得できる価格)で購読されてもいいかも?

No.2 6点 nukkam
(2014/09/02 18:20登録)
(ネタバレなしです) 1932年発表のウェンズ氏シリーズの第4作の本格派推理小説です。ステーマンの作品は仕上げの粗さが気になることが多いのですが、本書は結構手堅く緻密に作られています。ヴァン・ダインの「ベンスン殺人事件」(1926年)を強く意識した作品で、それを読んでいるかいないかで本書の面白さも変わると思います(読んでいなくてもそれなりには楽しめます)。島田荘司を髣髴させるような奇抜な設定も印象的ですし、アガサ・クリスティーの某作品を先取りしたアイデアにも驚きました。

No.1 6点 kanamori
(2010/07/02 21:23登録)
ネタバレ気味ですが、ウェンズ氏が探偵役を務めるシリーズの長編ミステリ。
フランス片田舎の城館を舞台にした連続射殺事件で、頻繁に「ベンスン殺人事件」に触れながら弾道学による犯人の身長を特定する過程が描かれています。そのあたりまでは、真っ当な館ミステリかと思いきや、終盤のウェンズ氏のひと言が意表を突きます。
主な容疑者は3人だから、誰もがタイトルに深い意味はないと思うんじゃあないかと・・・。この作品もクリステイの某作とアイデアがバッテングしていますが、本書の方が3年ほど早く出版されているようです。

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