赤い影の女 |
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作家 | 島田一男 |
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出版日 | 1955年01月 |
平均点 | 4.67点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 5点 | 人並由真 | |
(2018/05/17 22:04登録) 表題作とのカップリング作品である中編(短めの長編?)『山荘の絞刑吏』の評判をWEBで目にして、そちらに興味が湧いて手に取ってみた。 (そのあとで、下の江森さんの言葉どおり「本格ミステリ・フラッシュバック」でも本書が紹介されていることを知った。) ちなみに島田一男はあまり読んだことがなく、例によって本だけは買ってあるので今後また消化していきたい(・・・というつもり)。 それでくだんの『山荘~』は、パトリシア・マガーの有名な長編『探偵を捜せ!』(すみませんが、現時点で筆者は未読)に似通う設定のようだが、調べたところマガーの初訳は1960年の初頭(別冊宝石に『探偵を探せ!』の題名で一挙掲載)で、この『山荘~』が表題作となった単行本は1959年に出ている。島田が原書で読んでインスパイアされたか、あるいは誰かの紹介記事を読んでネタにしたか、それとも本当に偶然の一致で島田の方が少し早かったのか、そこら辺はなかなか興味深い。 ともあれ『山荘~』はわずか140ページ弱の中に、特異な危機状況に立つ主人公のスリルとサスペンス、その渦中で起きた予想外の殺人の成り行き、死体移動などの不可能興味や、最後のどんでん返し、そして肝要の真の探偵の正体・・・・・・などなどのミステリ的趣向が盛りだくさんで、これはもう少し紙幅を増やして長編にした方が良かったのではないか、という感じ。まあその分、密度感は高いのだが。 表題作の方は、地方から上京するフィアンセを新宿駅に迎えに行った主人公(ボヘミアンの青年)が、見知らぬ赤いレインコートの美女と関わり合い、それを端緒に謎の殺人事件に巻き込まれていくサスペンススリラー。 あまり推理する余地はなく、よくいえばウールリッチのサスペンス編的な趣もある(ただしウールリッチのような詩情は希薄)。こちらは80ページ前後と、筋立てにおおむね見合った紙幅の分量である。 一部のサブキャラクターへの肉付けや、ラストの奇妙な余韻など、ちょっと面白い部分もあったけど、まあ1時間ちょっとで読み通せる小品だろう。 本書の刊行当時の昔の東宝あたりが都会派の白黒スリラー映画にしていたら、もしかしたらちょっと良い感じのものができたかもしれないな。ちょっぴりそんなことも考えた。 |
No.2 | 4点 | 江守森江 | |
(2010/06/26 23:55登録) 「本格ミステリ・フラッシュバック」で紹介されたノン・シリーズ中編集で表題作を含む2作を収録。 初期の春陽文庫でしか出版されていず、入手困難だが、それに見合う作品ではない。 作者の真骨頂が本格ミステリではなく、会話主体にテンポで読ませるスピード感(軽い読み物として楽しむ)にあるので、持ち味が活きた作品ではない。 表題作は駄作で片付けて問題なく、「山荘の〜」も構成の面白さは買うが作者に求める作品ではないので5点(表題作と平均したら4点) ※余談 図書館に無かったので、わざわざトランク・ルーム奥から、島田一男・春陽文庫版全作品を詰め込んだダンボール箱を引っ張り出して再読してしまった。 |
No.1 | 5点 | kanamori | |
(2010/06/01 18:28登録) ミステリ中編2本収録されています。 表題作は男女カップルがファッション界の殺人事件に巻き込まれる話ですが、通俗ミステリそのもので駄作。タイトルも意味不明。 併録の「山荘の絞刑史」は探偵探し&犯人探しという設定が面白かった。嵐の山荘もので、強盗殺人時効寸前の主人公が宿泊人の中にまぎれこんだ警察官は誰かを推理しながら、新たに発生した殺人の犯人探しをせざるを得なくなる。よく似た設定の海外ものには劣りますが、まずまず楽しめました。 |