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ミステリの祭典

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同期

作家 今野敏
出版日2009年07月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 6点 パメル
(2024/04/30 19:31登録)
捜査一課の宇田川亮太は、家宅捜索の現場近くで同期の蘇我和彦を目撃した。蘇我の所属は公安部で、刑事事件とは無縁のはずだ。不可解な出来事から三日後、蘇我が懲戒免職になったとの情報が入った。
日本の警察組織は、刑事、組織暴力対策、公安といった部門間の対抗意識が強く、協調が難しい体制になっているらしい。その弱点に着目し警察組織の実態をリアルに描いている。
誰もが己の正義を貫こうとしている。部門が違うために正義のありようが変わってしまうだけなのだ。立場の違いを乗り越えて、力を合わせることは出来ないのか。宇田川の働きが、硬直した組織に思いがけない動きをもたらす。上層部と真っ向から対立し、最終的にやり込めるところは胸がすく思い。その根本が同期を救うためというのがいい。
真相や真犯人、同期の謎をめぐるミステリやサスペンス要素が炸裂している。一つの事件を通して成長を遂げる主人公の成長物語としても読めるし、さりげない形で友情を描いた物語でもある。
理屈ではなく情でもなく、しがらみでもなく、ただ同じ時に同じ場所に立ったという運命だけで繋がる関係。「仲間」、「戦友」といった存在、それが同期だろう。誰もが心の中に同期として意識する相手を持っているのではないか。それを意識して読めば、さらに味わい深い読書となるでしょう。

No.2 7点 HORNET
(2011/01/15 15:57登録)
 宇田川が警察同期の蘇我を救うために,その思いに触発された植松や土岐らとともに,保身を捨て,正しい理念で生きようとする。その熱さと,同僚たちの絆に感動しました。
 なかなか姿を見せない曽我がどうなっているのか,内部事情はどうなっているのか,その謎が解明される筋道だけでなく,人間ドラマとしての要素も楽しめます。

No.1 6点 kanamori
(2010/06/05 16:41登録)
懲戒免職になった同期の公安部刑事の窮地を救うべく捜査一課の若手刑事がスーパーマン的働きをするという物語。
著者の警察小説の集大成というむきもありますが、このプロットにはちょっと違和感があります。主人公の若手刑事が警察上層部や右翼組織のトップと簡単に対面できる点がご都合主義ですし、同期との心情的繋がりが主人公の行動原理になるほど充分に説得力を持つように描かれてないように思いました。
まあ、あまり細かいことに気にとめていては著者の小説を楽しめないのかもしてませんが。

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