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ミステリの祭典

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赤い熱い海

作家 佐野洋
出版日1967年01月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 7点 人並由真
(2020/05/15 20:25登録)
(ネタバレなし)
 196×年8月4日。羽田発函館行きの「東北航空」の航空機が飛行中の出火により函館沖に不時着。乗客18人と乗員3人のうち、前者の3名が海中に没して死亡と認定された。だが函館の企業「花井漁網」の専務である井波浩三の妻・昭子が、夫は乗客名簿に名前がないがもしかしたら誰かの名義で遭難機に乗っていたのでは? と疑義を抱いた。昭子の疑念を受けた東京と札幌に本社・支社を置く大手探偵事務所「全日本秘密調査網(AJSS)」の面々は、井波が乗っていた、そうでない状況をともに念頭に置きながら、死体の上がらない遭難者が本当に死んだのか、もし生きているならなぜ? とあらゆる可能性を追い求めるが。

 十数名の規模の民間探偵組織がほぼ一丸となって事件を追う(主要な探偵役はそのうちの4~5人だが)という趣向は独特のダイナミズムを感じさせるが、一方でこれなら、普通の警察捜査形式の謎解きでもよかったのではないか? という気もしないでもない。まあこの設定ならではの作中のリアリティのデティルもそれなりに書き込んであるので(いくらそれなりの規模とはいえ、あくまで民間企業である探偵社の弱みとか)、変わったものを読ませてもらった新鮮さは担保されている。

 主要調査員の動向だけ追っても並行して4つ5つのドラマが進むのだが、最終的にはその構成がうまく生きるあたりの手際はさすが。ここではあんまり書けないけれど。終盤の謎解きはやや強引で力業な感じもあったが、意外性としては十分に評価していいだろう。斎藤警部さんのおっしゃるとおりに企画と技巧が先行しすぎたきらいはあるが、力作なのは間違いない。
 
 作家としてのポリシー的に、長編ミステリでのレギュラー探偵をほとんど作らなかった作者だと思うけれど、このAJSSのシリーズはもう何作か読んでみたかったな。原島の成長譚なんか、連作の上で面白いファクターになった気がする。

No.2 6点 斎藤警部
(2016/07/01 00:46登録)
飛行機事故の死者は三名、疑惑たっぷりの行方不明が一名。森村誠一に遊び人の艶を吹き込んだ様な展開にちょっとハードな旅情が魅力。探偵役はなんと四人~わたしはこの事件の探偵です、わたしもこの事件の探偵です、おいらもこの事件の探偵です、おっとアチキだってこの事件の探偵です~という逆シンデレラの罠状態(??)。結末に意外性の新機軸有りだが、やや企画と技巧に走ったか。ま悪かない。

No.1 5点 kanamori
(2010/05/15 15:53登録)
函館沖で墜落した航空機から消えた会社役員の謎。
複数の探偵事務所調査員の視点で、事件の真相解明の過程が描かれている点はなかなか面白く、そこに仕掛けがあるのも巧妙だと思いましたが、意外性を追求するあまり犯人の動機がどう見ても不自然になってしまったのは惜しい。

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