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ミステリの祭典

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刑事くずれ/ヒッピー殺し
ミッチ・トビン

作家 タッカー・コウ
出版日1980年12月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 クリスティ再読
(2016/07/29 22:24登録)
筆者は本サイトに書き込みをするような人だからまあミステリマニアの部類に入るのだろうけど、「密室もの」ってのはどうも苦手だ。
だってえ、いろいろな解法がありすぎるために、具体的な小説の中で一つに決定することが難しいから、推理してもムダになることが多いし、設定としてオタク臭が強いからリアルな小説とはそもそも相性が悪い...というわけで、長編の密室ミステリなんて評者はホントに厄介なものとしか思えないや(まあだから犯人の意図に反して密室になってしまう..とかはオーケーだよ)。
本作の凄いところというか、まさにその狙いは「リアルな密室もの」を書くことなんだよ。本作は現場が密室になることの流れの説得力や、犯人にとっての密室になることのメリット、それに狭い意味でのトリックとしての自然さ..と、「リアルな小説の中での密室」に非常にイイ回答をしている作品である。まあこの「刑事くずれ」シリーズ自体が、ちょっと大時代的なネタをほぼハードボイルド的と言っていい小説内容でコナしてみせる、という志の高いシリーズになっているんだが、その中でも出色である。あれっ、たぶん本文の中で「密室」という言葉さえ全く使ってないんじゃないかなぁ。
まだからトリックマニアはつまらながるかもしれないが、見どころはリアルに徹した作者の小説的処理の手際のよさである。若干メタな視点かもしれんがそれをとくとご堪能あれ。評者みたいな「密室嫌いな小うるさい読者」のための密室ミステリだよホントにこれはね。
あと本シリーズは、心に傷を負った元刑事絶賛引きこもり中が名探偵である。今のラノベでもありそうな設定なんだが、60年代にこの設定を考えたのはスゴいなぁ....

No.2 6点 蟷螂の斧
(2015/07/17 12:26登録)
”落伍刑事の汚名を浴びながら困難な密室殺人に挑むミッチ・トビン。ハードボイルド第2弾”とありますが、本格要素の強い作品でした。心理的密室を扱った作品で楽しめました。欲を言えば、容疑者ロビン(記憶喪失)の絡みがもっとあったらなあと思いました。

No.1 6点 kanamori
(2010/04/09 20:48登録)
自分の不祥事で同僚を死なせた元刑事、ミッチ・トビンを主人公とするシリーズ第2弾。
ハードボイルド風の再生物語の様相ですが、実はこのシリーズ5冊いずれも本格ミステリの趣があります。とくに本作は密室殺人を扱っており、それもちょっと独特な心理トリックで読ませます。
著者の別名義でも見かけないユニークな作風で、地味ながら埋もれさせるには惜しいシリーズだと思います。

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