home

ミステリの祭典

login
幽霊紳士

作家 柴田錬三郎
出版日1960年01月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 7点 クリスティ再読
(2023/12/16 09:06登録)
書けなくなって落魄した大坪砂男がシバレンのアイデアマンやっていた、という有名な話がある。シバレンで唯一「ミステリ」カテゴリに入る本作あたりに、その「大坪臭さ」が感じられるか?というのもちょっとした読みどころなのではないのだろうか。

物語の主人公が一応の結末をつけてほっとした瞬間に、どこからともなく現れて「意外な真相」を囁く灰色の紳士-幽霊紳士。前の話の人物が次の話でも連鎖的に登場して、話を繋いでいく構成が実に秀逸。シバレンらしく色と欲が全開のアブラギッシュな昭和のバイタリティを感じる話で、そんなギラギラした瞬間に、意外な陥穽に落ちこむあたり、ミステリのオチというよりも「奇譚」といった感覚の切れ味。

いや実際、殺人が主体でミステリしている、といえばそうなんだが、いわゆる「トリック」とかそういう話ではなくて、人間心理の微妙なあたりをキッチリと突いているのが見事。(少しだけバレ)人命よりカナリアの命の方が大事な殺し屋に人間性の荒廃を感じたり(「私刑」やら「花売娘」やらの世界に近い)、義足の乞食の夫婦生活の真実に驚かされたりやら、総じて「ミステリ的な真相」以上に男女関係やら人間心理の真相の方に、興味深いものが多い。

だから「ミステリであってミステリでない」うまい立ち位置が本作のキモ。そこらへんにもやはり「文学派」の大坪っぽさを感じるが、色と欲の円月殺法の切れ味はシバレンならではのもの。

...いやだからさ、皮肉で辛辣な幽霊紳士はそんな人間の現実を肯定しているんだとも思うのさ。

No.2 6点 ボナンザ
(2021/10/24 20:21登録)
創元版は異常物語も付いてお得。
最終話で自らワンパターンと言う通り方向性は一緒だが、話の作りとお約束のどんでん返しは読んでいて飽きない。

No.1 5点 江守森江
(2010/04/03 17:51登録)
眠狂四郎でお馴染みだった作者唯一の推理短編集。
おおかたの推理小説が終了する場面で幽霊紳士が現れ、決着の裏にある真相を囁く形式の連作短編12話を収録。
前話の中心人物が次話の冒頭に登場する趣向でループする。
書かれた時代を考えると形式や趣向は斬新と云える。
しかし、論理より幽霊の啓示で人間の内面(特に作為や悪意)が暴かれるので、推理を読まされる感覚な為にもう一つ楽しめなかった。
一部の、現代では忘れさられた貞操観や倫理観で描かれる真相の開示には苦笑せざるを得ない。
但し、昭和30年代の風俗を知るには良い作品。

3レコード表示中です 書評