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ミステリの祭典

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失投
私立探偵スペンサー

作家 ロバート・B・パーカー
出版日1977年03月
平均点5.75点
書評数4人

No.4 7点 斎藤警部
(2024/11/02 17:15登録)
“男は就寝前に力をつけなくてはならない。 胸が躍るような夢をみるかもしれない。 みなかった。”

闊達でキラキラしたユーモア横溢。 会話と地の文との軽快なパスワーク。 筋トレと健康を愛する私立探偵スペンサーは 「マーティ・ラブ投手に八百長の疑い微妙にアリ」 とするボストン・レッドソックスのフロントから極秘の調査依頼を受ける。
シンプルに躍動する筋立てと、何気に込み入った思索。 ガールフレンドとの会話は軽快だが、恋人との談論は哲学講義めく。 ノンフィクション・ライターを装い、ラブ投手夫妻と幼い息子の住む家を訪れたスペンサーは、さっそく或る違和感を検知し、それを足掛かりに予想外の方向へと調査を進める。 破壊すべきは悪事の構造。 修正すべきは人生の軌道。 納得すべきは自身の行動。 密室殺人事件が出て来たのは笑った。

「なんだ?」
「握手」

登場人物表には不在だが、暖かいキャロル・カーティスの存在は重要だ。 フロイドの未来に癒しと幸あれかし。

No.3 5点
(2017/07/10 21:53登録)
スペンサー・シリーズは今のところ発表順に読んで、これが3冊目です。
巻末解説の中に、パーカー自身の「どちらかというと、冒険小説と呼んでほしい」という言葉が引用されていますが、確かに後半はそんな感じです。さらに「スペンサーは探偵だが、シャーロック・ホームズとか、エラリイ・クイーンみたいな探偵じゃない」という作者の言葉については、だったらダイイング・メッセージを鮮やかに読み解くコンチネンタル・オプや、もつれた人間関係を解きほぐしていくリュウ・アーチャーみたいな探偵でもないことになります。作者の小説構成がハメットやロス・マクとは異なる点です。ミステリ的には、悪党たちはスペンサーが八百長試合捜査を始めるとすぐに彼を脅しに現れることで正体を明かしてしまうという安易さ。銃撃戦だって、マイク・ハマーなら正当防衛で通るようにうまく仕組みそうです。でも、この単純さはこれでそれなりにいいか…

No.2 7点 あびびび
(2011/01/22 13:04登録)
ボストンで活躍する探偵スペンサー。確かシリーズの3作目だが、このあたりから躍動感が増し、アクションが多くなる。

レッドソックスの大投手に八百長疑惑、その真意を確かめるために雇われたが、その原因は家族にあった。そのため、ギャングと対決することになったスペンサーは威風堂々、正面から向かって行く。

恋人スーザンとの会話も軽快になっている。

No.1 4点 mini
(2010/03/25 10:34登録)
本日発売の早川ミステリマガジン5月号の特集は、”追悼特集=ロバート・B・パーカーに献杯”

最近パーカー、フランシスと相次いで巨匠が亡くなったが、パーカーは初めて読んでみた
私はハードボイルドには全く偏見を持ってないのだが、パーカーだけは読まず嫌いだったんだよな
だってさ前評判聞くに、健康優良児の私立探偵なんて興味湧かないよな普通
ミステリー小説に出てくる私立探偵なんてワルぶってて丁度良い位に思っていたからさ
それにさ、例えば自身もアル中だったチャンドラーなどのように、作家自身にハードボイルドを書くような性格と人生があった作家と違い、パーカーはハメット研究で学位を取った大学教授である
言わば研究の成果を実践に応用しましたって感じで、何て言うのか学者によって計算づくで創られたハードボイルドみたいなのがなぁ
で実際読んで見ると、まあ格別良くも無いが、そんなに言われるほど悪くもない
ボストンを舞台に、わざとの失投か八百長疑惑の大リーグ投手の身辺を調査する私立探偵スペンサー
ボストンと言えば今や松坂大輔も在籍するレッドソックスだ
作者パーカー自身が野球が好きなんだろう、その辺の描写には精彩がある
どうもパーカーという作家は、文章は上手いがプロットの構築という点で才能に欠けてる感は否めない
前半の地道な調査の部分はなかなか面白いんだけれど、後半になって単なるヒーロー小説だけになってしまう展開に深味がないんだよな
スペンサーシリーズは最初期にはこれといった特徴の無いハードボイルドだったのが、3作目のこの作品からヒーロー小説的傾向が強まる初期の代表作の一つらしい
人間ドラマ的部分はかなり面白いので、ヒーロー小説的な要素で好き嫌いが分かれそうだ

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