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ミステリの祭典

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声優密室殺人事件
推理実験室シリーズ 旧題「北まくら殺人事件」

作家 幾瀬勝彬
出版日1977年09月
平均点3.67点
書評数3人

No.3 5点 人並由真
(2020/05/27 19:54登録)
(ネタバレなし)
 その年の12月4日。荻窪のアパート「荻花荘(てきかそう)」の一室で、独り暮らしの25歳の女優かつ声優・松本三七子が死亡する。状況からガス中毒の事故死と公的には判断されたが、当人が幼少時から禁忌としていた北枕で死亡していたこと、さらには他の細かい事実から事故死や自殺ではなく、殺人ではとの疑いが持ち上がった。この謎に向かい合うのは、同じ推理小説新人賞に応募するミステリマニア有志で結成された「推理実験室」の男女6人だが。

 作者・幾瀬勝彬は、知る人ぞ知る昭和B級パズラーの書き手。
 第四(?)長編の『死のマークはX』(1973年)だったかその次の『殺しのVマーク』(1976年)だったが当時のミステリマガジンの書評で「デタラメ」な内容よばわりされたのに反発して抗議文を送ったものの、その書評氏から翌月か翌翌月かの号で作中の辻褄の合わない点を箇条書きにされ、返り討ちにあったのを記憶している(汗)。

 結局、パズラー作家としては大成せず、半ダースほどのミステリの著作を出したのち戦記系列の作家に転向したはずだが、今となってはこういう昭和のマイナーミステリ作家に妙な愛着を覚える面もあり(評者自身はこれまで、大昔にそのくだんの『X』だか『V』だかの一冊を読んだだけのはずだが)、ふと思いついて、比較的古書価の安いこの一冊を注文で買って読んでみる。しかし先のレビューのお二人、キビシイですな(笑・汗)。

 で、実際に読んでみると、まあ良くも悪くも本当に先に書いたとおり、額面通りの昭和B級パズラーという感じ。
 サークル推理実験室のメンバーそれぞれが各自の着眼点から事件の細かいポイントにこだわり、調査を進行。やがては該当の事件を事故死で済ませてしまった担当の刑事までを引き込んでいく流れは悪くはない。中盤まではそれなりに楽しく読めた。
 
 途中で、21世紀の今なら、出版社や編集部がコンプライアンスを気にかけてまず作家にそうは書かせないだろうな、というアレな描写が出てくるのにはちょっと鼻白んだ。だが一方で、そういったある種のがさつさみたいなのも、なんかこの作者っぽい。
 でもって複合的なトリックのひとつひとつがしょぼいのは確かにホメられたことではないんだけれど、妙なポジションで用意された「犯人の意外性」など、なんか心に引っかからないでもない。
 結論としては、個人的にはまあそんなにダメダメというほどでもないです。こういう作品にたまに付き合ってもいいよね、ぐらいの軽い親しみは覚えた。
 またいつかこの作者の作品は、そんなに期待をこめないで読むでしょう。

No.2 3点 nukkam
(2017/05/06 23:07登録)
(ネタバレなしです) 1971年発表の「北まくら殺人事件」を1977年に改題した本格派推理小説です。推理小説の同人誌発行を目指す「推理実験室」の6人がアマチュア探偵として謎解きに挑戦という設定はアントニイ・バークリーの「毒入りチョコレート事件」(1929年)の二番煎じ感が拭えないもののなかなか面白そうな趣向です。もっともバークリー作品のような多重解決パターンではありません。事故死か自殺か殺人かを見極めるだけでも結構なページを費やしており、時に中途半端な疑惑報告に留まってしまうのもアマチュアの捜査ならではです。死者の性行為分析までも謎解きに絡めているところは読者の好き嫌いが分かれそうで、最後をベッドシーンで締めくくっているのに至っては通俗に過ぎているような気がします。

No.1 3点 kanamori
(2010/03/03 20:24登録)
ミステリマニア6人の集い「推理実験室」が実際の殺人事件をディスカッションし解決するB級本格、シリーズ第1作。
設定自体はツボなんだが、あまりにもトリックがアレだし、せっかく色々な職業の人物が集まっているのだから、それを生かしたナルホドの推理を披露してほしかった。

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