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ミステリの祭典

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下北の殺人者

作家 中町信
出版日1989年12月
平均点5.50点
書評数4人

No.4 6点 人並由真
(2020/12/21 20:13登録)
(ネタバレなし)
「私」こと三添知子は、ミステリファンの人妻。夫で35歳の明彦は出版社勤務の雑誌編集者だが、社内の同郷の面子と「県人会」を結成。そのメンバーと近親者が下北への観光旅行に行くことになった。だが本来の幹事役だった総務のOL、中津けい子が事前に変死。そして旅先の地でもさらなる惨事が……。

 謎解きミステリとしての大ネタと中ネタを用意し、さらに手がかりの配置とロジックの妙でもしっかり練り上げた作品。
 講談社文庫版で読んだが、事件の起こるごとにポイントに挿入される克明なビジュアルの現場見取り図などの趣向も、とても楽しい。

 ある登場人物に設定された大きな仕掛けは、なんかクイーンの国名シリーズとかにありそうな感じ(具体的にはどの作品とアイデアやトリックが同一または類似ということではなく)で、そういった意味でもなかなかゾクゾクした。

 弱点は登場人物の描写や書き分けが本当に平板で、フェイクの解決の際にも本当の真相があかされても、サプライズもときめきもないこと。一方で<あっちの仕掛け>は軽く驚いたが、それはまあ普通の意味での驚愕とは少し違う。この場ではあんまり言えないが。
 力作だとは思うが、作者の小説づくりと物語の演出の弱さを、改めて実感した一作でもあった。

No.3 5点 kanamori
(2016/02/20 20:48登録)
中町信の再読マラソン、今年の1冊目。
専業作家になって最初の作品、しかも当時のミステリ出版の舞台としては花形といえるメジャー・レーベル・講談社ノベルズ初登場ということで、気合が入ったであろう力作だと思います。
宝くじのグループ買いで当てた大金が絡む”下北半島温泉バスツアー連続殺人事件”という、基本のプロット自体はこれまで書いてきたものとそう変わらず、中町ミステリのテンプレートどおりの展開。
容疑者候補の県人会メンバーがどんどん減っていくのに、簡単には読者に真犯人を絞り込ませないミスリードのテクニックが読みどころです。
ただ、今作では動機の面から真相に気付かせないよう作者が採った方法が、アンフェアとまでは言えないまでも、あまり好みのものではありませんでした。これだとスッキリと騙されたという感じを受けないので、採点は少し厳しめになりました。

ところで、文庫解説によると、推理作家の津村秀介氏が中町氏と教科書出版会社で同僚だったとのこと。
妄想ですが-------
 津村「猪苗代湖、もらっていいかな?」
 中町「どうぞどうぞ、こっちは温泉シリーズでいくから」
二人の間で、そんなやり取りがあったかもしれないw

No.2 6点 nukkam
(2014/10/17 11:05登録)
(ネタバレなしです) 1989年、出版社勤務と兼業だった作者がついに専業作家となって最初に発表した本格派推理小説です(通算16作目)。講談社文庫版の巻末解説の通り、登場人物は決して多くありませんがこの複雑な真相を読者が解決前に完全に見破るのは不可能ではないでしょうか。二転三転、どんでん返しの連続が半端でなく、まさに論理のアクロバットです。当時の国内は新本格派推理小説の黄金時代を迎えていましたが、トリック重視の作品が多い新進作家とは異なる、プロット勝負の謎解きで個性を発揮しています。

No.1 5点 yoneppi
(2010/02/05 22:53登録)
ご都合主義な感じもするがまあまあ楽しめた。この人称表記はどうなんだろう。

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