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ミステリの祭典

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名探偵も楽じゃない
名探偵シリーズ

作家 西村京太郎
出版日1982年09月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 8点 虫暮部
(2023/09/14 13:27登録)
 本格ミステリとか名探偵とかいった概念を対象化して、それ自体を枠組みごと仕掛けに使うような、新本格みたいなミステリ論ミステリが、1973年に既に書かれていた。
 しかもなかなか出来が良いじゃないか。徒にロジックを錯綜させることもなく、ポイントを巧みに突いてストンと落としている。“狙いが透けちゃう感” は確かに否定出来ないが……。

 瑕疵はT氏が部屋で怪我をさせられた事件。チェーンロックによって密室になっていた。
 この事件は、犯人がT氏を狙ったものの殺し切れずに逃げた、と思わせる為のT氏のマッチポンプである、と思わせる為に犯人はわざと殺さなかった、のである。
 さて、チェーンロックの為に “犯人はどうやって部屋から出たんだ、お前のマッチポンプだろう” とT氏は疑われた。仮にマッチポンプなら、わざわざ自分が疑われる状況をT氏が作るのはおかしい。と言うことは、T氏が作るのはおかしい状況を犯人が作るのもおかしい、よね。

 マニア達が “身の程を弁えた常識人” 過ぎで、トンデモ行動に(あまり)出なかったのは残念。

 メグレがO型、と言うのは原典に記述されている公式情報?

No.2 4点 E-BANKER
(2011/11/03 10:44登録)
名探偵パロディシリーズの第3弾。
今回は、高層ホテルの最上階フロアというクローズド・サークルで起こる連続殺人事件が舞台。

~ミステリーマニアの組織の例会が、会長の経営するホテルで開かれた。特別ゲストはクイーン、メグレ、ポワロ、明智小五郎の4大探偵。その席に自ら現代の名探偵を名乗る青年が闖入、殺人の匂いがあると予言。果たして奇怪な殺人劇が連続して起こってしまう! 世界的名探偵たちはどうする?~

さすがに3作目ともなると、設定自体に無理があるような気がする。
大した分量でもないのに、次々と惜しげもなく起こる殺人事件。
クローズド・サークルでもあるし、本格ファンなら望むべきプロットのはずですが、いかんせん内容が軽すぎる!
今回、自称「名探偵」として登場するのが、その名も「左門字京太郎」。
長身でハンサムなハーフってことは、これって後にシリーズ化される「私立探偵・左門字進」の原型?っぽいです。
で、殺人事件の方は、左門字の推理によって、一旦収束することに・・・
しかし、今回は4大名探偵の影薄すぎ! と思ってると、最後の最後になって、やっと二重構造の事件の背景が4人によって明かされるという趣向。
(これもかなりご都合主義ですが)

決してお勧めできるようなレベルの作品ではありません。
何でシリーズ化しちゃったんですかね。1作だけでやめとけばよかったのに・・・
(因みに、「Yの悲劇」は思いっきりネタばらししてるので、未読の方がいらしたらご注意を!)

No.1 6点 江守森江
(2009/11/08 07:40登録)
名探偵パロディシリーズ3作目。
残念ながら「Yの悲劇」「獄門島」のネタバラシから始まる(-1点)そこにも狙いが潜むので改訂してカット出来ずに残念。
登場人物に語らせる皮肉タップリなミステリ論は実に楽しい。
いつものメンバーに加え、ミステリ愛好会メンバーと新名探偵候補まで登場して連続殺人が起こる。
皮肉にも名探偵達が連続殺人を防げないのはご愛嬌。
パロディと侮ると、吉牟田警部補の捨て推理→事件を挟み→マニア→新名探偵候補・左文字京太郎の順に披露される推理、更に先の名探偵達の推理と何段階もの構成にやられる。
逆に、この作品を今更読むミステリ好きには構成から狙いが透けると思えるのが惜しい。

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